アルハラとは、命を奪う可能性すらあるハラスメントの一種です。アルハラは、犯罪にもなるものです。アルハラは誰でも被害者になる可能性がありますが、加害者になる可能性もあるのです。
アルハラの被害者にもならず、加害者にもならないようにアルハラに対して正しい知識を身につけておきましょう。
アルハラの定義や事例、対策などをまとめました。会社で働いている人は、アルハラで訴えられないように気を付けてください。
この記事の目次
アルハラの定義
アルハラとは、アルコール・ハラスメントの略です。お酒に関する嫌がらせのことですね。嫌がらせと言っても、ハラスメントの場合は、悪意の有無に関係なく、相手が不快に思ったり、精神的に傷ついたら、ハラスメントが成立するので注意が必要です。
アルハラは、別に相手を困らせようと思ってやったわけではなくても、お酒の席で相手が不快に思ったら、アルハラをしていることになってしまうのです。
特定非営利活動法人アスク(アルコール薬物問題全国市民協会)は、アルハラを次のように定義しています。
1.飲酒の強要
お酒の席で飲めない人に対して、お酒を飲むように強制したり、罰ゲームなどで飲まざるを得ない状況に追い込むこと
2.イッキ飲ませ
一気飲みを強要して、断れない状況を作り、一気飲みをさせること
3.意図的な酔いつぶし
ドンドン飲ませて、わざと酔い潰そうとする行為
4.飲めない人への配慮を欠くこと
お酒を飲めないことをバカにしたり、断っているのにお酒を勧めたりすること。また、お酒の席にノンアルコールのドリンクを用意しないこと
5.酔った上での迷惑行為
酔っ払ったことで、セクハラをしたり、暴言を吐いたりすること
これらがアルハラの定義になります。アルハラは、ただ単にお酒を無理やり飲ませようとすることだけではなく、お酒関係で不快な思いをさせることすべてが、アルハラと定義されるのです。
会社と大学でのアルハラの事例
アルハラにはどのような事例があるのかを見ていきましょう。アルハラと認定された事例を確認しておくことで、アルハラの被害者になることも加害者になることも回避することができます。
会社でのアルハラ事例
まずは、会社でのアルハラの事例です。会社での飲み会ではアルハラが起こりやすいので、注意が必要です。
会社の飲み会で部長から「俺の酒が飲めないのか!!!飲まないと出世できないぞ!!!」と飲酒を強要される。無理に飲んでいたら、酔いつぶれてしまった。
職場の先輩から、「仕事ができないんだから、せめて酒を一気飲みしろ!仕事もできない、酒も飲めないなんて使えない奴だな」と一気飲みすることを断れない状況を作られた。
無理に一気飲みしたら、急性アルコール中毒になり、救急搬送された。
部署での飲み会で酔っ払った男性社員や上司に「彼氏いないのか?」、「減るもんじゃないんだからやらせろ!」、「ブスだけど胸はでかいな」のようにセクハラ発言を連発された。翌日、文句を言ったら、「酒の席のことだ。無礼講だろう。」のように言われた。
会社では上司と部下という上下関係がハッキリしていて、さらに出世やリストラなど人生において重大なことが関係する場で、上司や先輩に対して、ハッキリ断れない、意見できないことが多いため、アルハラが日常化しやすいという現実があります。
特に、一昔前は「仕事をするならお酒が飲めないとダメ」、「飲み会に参加しないと、仕事が円滑に進まない」という考えが一般的でしたので、アルハラが横行しやすいのです。
大学(学生)のアルハラ
次に大学(学生)のアルハラを見ていきましょう。アルハラは学生間でも起こりうるのです。
サークルの新歓コンパで未成年なのに先輩に囲まれて、お酒を飲むように強要された。断ったら、ノリが悪いなと舌打ちされた。「そういう人は、うちのサークル入らなくて良いから」とサークルの入会を断られた。
サークルの合宿で、お酒が弱いのに、一気飲みコールをされて、飲まざるを得ない状況に追い込まれた。一気飲み後は意識を失い、気づいたら嘔吐まみれの状態で部屋の隅に寝かされていた。
ゼミの飲み会で、教授に「お酒を飲めない人は、うちのゼミに入る資格はない」と言われ、お酒を無理やり飲まされた。酔いつぶれてしまい、急性アルコール中毒で搬送された。
大学でも先輩・後輩の上下関係、また教員と学生の上下関係がハッキリしていますし、学生はまだお酒の飲み方がわからない、お酒を飲むことがカッコいいと思っている人が多いので、アルハラが起こりやすいです。
アルハラの被害者になりやすい人の4つの特徴
アルハラの被害者になりやすい人は、次の4つの特徴があります。被害者になることを回避するためにも、アルハラの被害者になりやすい人の特徴を確認しておきましょう。
お酒を飲めない人
アルハラの被害者になりやすいのは、お酒を飲めない人です。お酒を飲めるか飲めないかは、アルコールを分解する酵素の活性で決まります。日本人のお酒を飲める人、飲めない人の割合は次の通りです。
このような割合なので、お酒が弱い人・まったく飲めない人は44%もいます。特に、まったく飲めない人は、体質的に飲むことができないので、アルハラの被害者になりやすいのです。
空気を読み過ぎる人
アルハラの被害者になりやすい人の2つ目の特徴は、空気を読み過ぎる人です。
周囲の空気を読んで行動する人は、お酒を飲むように強要されても、「ここで断ったらまずいことになる」とか「場の雰囲気が悪くなる」のように、自分よりも周囲のことを優先して考えるため、お酒を断れず、無理してお酒を飲むことになります。
そのため、アルハラの被害者になりやすいのです。
新入社員や新入学生など立場が弱い人
アルハラの被害者になりやすい人、次は新入社員や新入生のように立場が弱い人です。立場が弱い人は、立場が強い人から何かを無理強いされても、断ることができません。
また、新入社員や新入生が入ってくる季節は歓迎会が開かれることが多く、お酒を飲む機会が増えます。
そのため、新入社員や新入生はアルハラの被害に遭いやすいのです。
その場の雰囲気に流されやすい人
アルハラはその場の雰囲気に流されやすい人も、被害者になりやすいので注意が必要です。
本当はお酒が弱いのに、「みんながたくさんお酒を飲んでいるから、自分も飲もうかな?」のように考えたり、「みんな飲んでいるし、自分もお酒を飲めるキャラを演じなくちゃ!」のように考える人は、どんどんお酒を飲まされてしまうので、アルハラの被害を受けやすいです。
アルハラの加害者になりやすい人の5つの特徴
次は、アルハラの加害者になりやすい人を見ていきましょう。アルハラの加害者になりやすい人の特徴は5つあります。
お酒が強い人
お酒が強い人は、無意識のうちにアルハラの加害者になりやすいので注意が必要です。お酒が強い人は、お酒が飲めない人の気持ちがなかなか理解できません。
自分が飲めるんだから、相手も飲めるはずと考えてしまいがちなんです。だから、お酒が強い人は、自分と同じペースでお酒を飲むように相手にも強要して、悪気がないのにアルハラの加害者になることがあります。
悪気がなくても、相手にお酒を強要すれば、アルハラになりますので、注意しなければいけません。
お酒を飲む=カッコいいと勘違いしている
アルハラの加害者になりやすい人は、お酒が飲めることをカッコいいことと勘違いしている人です。これは、大学生に多いタイプですね。
お酒が強い人はカッコいい、お酒が飲めない人はカッコ悪い。このような物差しで相手を見ているので、お酒が飲める自分はカッコいいと勘違いして、同じようにすることを相手に強要するんですね。
お酒が飲めるか飲めないかなんて、カッコよさには全く関係がないのに、間違った価値観のせいで、アルハラの加害者になってしまうことがあるのです。
体育会系で上下関係に厳しい
アルハラの加害者には体育会系で上下関係に厳しい人が多いです。先輩が絶対に正しい、先輩の言うことはすべて聞かなければいけない、上司の言うことにはどんなことでも従うべき。
学生時代からずっと体育会系で育ってきて、厳しい上下関係の中で過ごしてきた人は、後輩・部下が「No」ということを許しませんので、後輩がアルコールを飲むことを断っても、それを許さず、アルコールを強要して、アルハラをしてしまうのです。
お酒に飲まれてしまう人
アルハラの加害者になりやすい人は、お酒に飲まれてしまう人です。お酒を飲むと、人格が急変する人がいますよね。粗暴になったり、偉そうになったりする人です。
普段は温厚で優しいのに、お酒に飲まれてしまうタイプの人は、一緒に飲む人にもお酒を強要することが多く、アルハラをすることが多いのです。
家族や親しい友人から、「あなたはお酒を飲まないと良い人なんだけど」とか「お酒を飲むと、性格変わるね」と言われたことがある人は、自分がアルハラをしている可能性があることを自覚して、注意しなければいけません。
会社の飲みニケーションは重要だと思っている人
アルハラの加害者になるタイプの人は、昭和のサラリーマンタイプです。昭和のサラリーマンは、「飲みにケーションは重要!」、「酒を飲んで、初めて腹を割って話せる」、「一緒に酒を飲まないと、仕事仲間とは認めない」のように考えている人がいますよね。
確かに、アルコールはコミュニケーションを円滑にすることもありますが、だからといって、強要するものではありません。アルコールを飲まなくても、コミュニケーションを円滑にすることができます。
飲み会は大切、飲みにケーション万歳!というタイプは、部下や後輩に、知らず知らずのうちにアルハラをしていることがありますので、注意してください。
アルハラは犯罪?アルハラで逮捕される可能性も!
アルハラは犯罪になる可能性があることを知っていますか?お酒が好きでお酒に強い人にとっては、「アルハラなんて、大げさじゃないか!」と思うかもしれません。
でも、それはお酒が強いからそういう考えになるのです。お酒が苦手な人にとっては、アルハラは大げさなものではありません。
アルハラは法律で禁じられています
アルハラは法律で禁じられていることをご存知でしょうか?日本にはたくさんの法律がありますが、その中の1つに「酒に酔つて公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律」という法律があります。
この「酒に酔つて公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律」の第二条では、次のようなことが定められています。
すべて国民は、飲酒を強要する等の悪習を排除し、飲酒についての節度を保つように努めなければならない。
このように日本国民は飲酒を強制するなどをしてはいけない。節度ある飲酒をすべきであると法律で定められているのです。
だから、アルハラをするのは法律違反になるのです。もう一度言います。アルハラは、法律違反です。
アルハラで適用される罪名
アルハラは法律違反になりますが、「でも、逮捕されるわけではないでしょ?」ように思うかもしれませんが、誤解です。行き過ぎたアルハラは、犯罪になるのです。
■強要罪=3年以下の懲役
脅迫などで飲酒を強要した場合
■過失傷害罪=30万円以下の罰金または科料
意図的ではないものの、飲酒を強要して、急性アルコール中毒にさせた
■傷害罪=15年以下の懲役、または50万円以下の罰金
意図的に飲酒を強要して酔い潰した、急性アルコール中毒にさせた
■過失致死罪=3年以上の有期懲役
飲酒を強要し、急性アルコール中毒で死亡させた
■保護責任者遺棄罪=3年以上5年以下の懲役
酔いつぶれた人を放置した。放置した結果死亡したら、保護責任者遺棄致死罪になり、さらに罪が重くなる
アルハラの被害に遭わないための6つの対策
アルハラの被害に遭わないためには、自衛をすることが大切です。本当なら、アルハラのない社会になることが一番良いのですが、日本はまだまだアルハラが横行しているのが現状です。
アルハラの対策を6つご紹介します。
健康面を理由に断る
アルハラの被害に遭わないための対策、1つ目は健康面を理由に断ることです。お酒の席でアルコールを勧められると、なかなか断れないこともあるかもしれません。また、断っても「1杯くらい大丈夫でしょ?」と勧められることもあります。
でも、健康面を理由に断われば、多くのケースでは「じゃあ仕方ないね」とわかってくれます。
・昔お酒で救急搬送させて、入院したからお酒は止めている
・注射の時のアルコール消毒すらダメだと伝える
このように健康面を理由にして、お酒を断るようにしましょう。
運転を理由に断る
アルハラの対策は、運転を理由にするのもありです。ここ10年ほどで、飲酒運転、酒気帯び運転は社会的に断罪されるようになっています。
お酒を飲んだら、絶対に運転してはいけない。これはほとんどの人が認識していることです。だから、「今日は車なんで」という理由でアルコールを断りましょう。
また、ちょっと面倒ではありますが、飲み会の時はあえて運転手役を買って出て、「みんなのためにお酒は飲めないんです」というアピールをしておくことも、アルハラ対策には有効です。
お酒の席をできるだけ避ける
アルハラ対策のためには、お酒の席はできるだけ避けるようにしましょう。どうしても参加しなければいけない飲み会は仕方がありませんが、参加しなくても何とかなるという程度の飲み会は、いろいろ理由をつけて断ってしまいましょう。
お酒の席に行く回数が少なければ少ないほど、アルハラの被害に遭いにくくなります。
アルハラグループから抜ける
お酒を断っても、アルハラを止めてくれないという場合は、アルハラのグループを抜けることも考えてみましょう。
学生のサークルだったら、抜けやすいですよね。会社の場合は、すぐに良い転職先が見つかるとは限らないので、安易に転職を勧めることはできませんが、転職活動を始めてみても良いと思います。
アルハラだけでサークルを辞めたり、転職するのは大げさと思うかもしれませんが、アルハラで急性アルコール中毒になったら、最悪の場合、命を落とすことになりかねないのです。
自分を守るためにも、アルハラをしてくるグループから抜けることも考えてはいかがでしょうか?
上司や会社に相談する
アルハラ対策の5つ目は、上司や会社に相談することです。上司がどんなタイプかにもよりますが、アルハラに理解があるタイプの上司だったら、上司の了解を取っておけば、堂々と飲み会を欠席できます。
また、アルハラをしてくる先輩社員も、上司から一言言ってもらえば、アルハラをするのは止めるでしょう。
もし、上司が進んでアルハラをしてくるタイプなら、会社のハラスメント対策室や人事課などに相談してください。
最近は、ハラスメントに対して敏感になっている会社が多いので、上司や会社に相談すれば、一気に解決することがあります。
訴えると主張する
アルハラ対策の最後は、訴える主張することです。先ほども言ったように、アルハラは法律違反です。そして、場合によっては刑事罰の対象にもなります。
だから、訴えることができるんです。たとえ、刑事罰の対象にならなくても、民事で精神的な苦痛を被ったとして、損害賠償請求をすることができます。
過去の判例としては、やはり急性アルコール中毒で死亡した場合に遺族が訴えるケースが多いですが、別に死亡しなくてもアルハラをで被害を被ったら、訴えることは可能なんです。
裁判で訴えなくても、先ほど言ったように会社のハラスメント対策室に訴えれば、訴えられた側は出世に響きますので、ダメージを与えることができます。
アルハラは法律違反であり、刑事罰の対象にもなることをきちんと説明して、訴えることを考えていると主張すれば、アルハラの防止対策になるでしょう。
脅すように言わずに、日常会話の中で「知ってました?アルハラって犯罪なんですよ~。アルハラされたら、訴えなくちゃ!」のように言っておくことも、アルハラ対策になります。
アルハラの定義や会社・大学の事例・アルハラ対策についてのまとめ
「飲酒の強要」「イッキ飲ませ」「意図的な酔いつぶし」「飲めない人への配慮を欠く」
・アルハラ事例
「会社:上司や先輩に対して断れない状況」「大学:学生はお酒の飲み方がわからず、お酒を飲むことがカッコイイと思っている」
・アルハラの被害者になりやすい人の特徴
「空気を読みすぎてしまう人」「新入社員や新入学生など立場が弱い人」「その場の空気に流されやすい人」
・アルハラの加害者になりやすい人の特徴
「お酒が強い人」「お酒を飲むことはカッコイイと勘違いをしている」「体育会系で上下関係に厳しい人」「お酒に飲まれてしまい、人格が変わってしまう人」「会社の飲みニケーションは重要だと思ってる人」
・アルハラをするのは法律違反になる
・アルハラでの罪名
「強要罪」「過失傷害罪」「傷害罪」「過失致死罪」「保護責任者遺棄罪」
・アルハラの被害似合わない方法
「健康面を理由に断る」「運転を理由に断わる」「お酒の席をできるだけ避ける」「アルハラグループから抜ける」「上司や会社に相談する」「訴えると主張をする」
アルハラの定義や会社・大学での事例、アルハラ対策などをまとめました。アルハラは法律違反であり、場合によっては刑事罰の対象におなりますので、訴えることは可能です。
お酒が苦手でアルハラの被害者になりやすい人は、アルハラについて正しい知識を持ち、しっかり対策しましょう。もちろん、加害者にならないようにも注意しなければいけません。