看護職には准看護師と正看護師の2種類があります。准看護師と正看護師は何が違うのでしょうか?これから看護師になろうと思っているあなたのために、准看護師と正看護師の6つの違いをまとめました。
また、准看護師の現状と将来性、准看護師から正看護師になる方法も解説しています。
正看護師と准看護師の6つの違い
正看護師と准看護師は何が違うのでしょうか?正看護師も准看護師も、どちらも看護師として働きますが、具体的に何が違うのか、いまいちわからない人も少なくないと思います。
正看護師と准看護師の6つの違いをまとめました。ちなみに、正看護師という資格はなく、正式には「看護師」という資格になりますが、ここでは准看護師との違いを明確にするためにも、「正看護師」という名称を使って説明していきます。
給料の違い
まずは、正看護師と准看護師の給料の違いを見ていきましょう。正看護師と准看護師の給料は、大きく違うのです。
・准看護師の平均年収=402万9200円
正看護師と准看護師の平均年収は、約80万円も違います。1ヶ月の給料は約4万円も違ってきます。さらに、ボーナスは15~20万円違うのです。
1年で約80万円も給料が違うと考えると、正看護師と准看護師の違いは非常に大きいと言えるのではないでしょうか?
養成期間の違い
次に、養成期間の違いを見ていきましょう。正看護師と准看護師は、免許を取るために勉強しなければいけない期間に違いがあるのです。
・准看護師=最低2年間
正看護師になるためには、最低3年間は学ばなくてはいけません。最近は、4年課程の大学が増えてきていますね。
それに対し、准看護師は全日制なら2年間で資格を取得できます。准看護師は給料は安いですが、早く看護職として働くことができるのです。
免許の違い
正看護師と准看護師の違い、次は免許の違いを見ていきましょう。
・准看護師=都道府県知事免許
正看護師は国家資格です。これは皆さんご存知かもしれませんね。正看護師の資格は国家資格ですので、厚生労働大臣が正看護師の免許を発行します。
それに対して、准看護師は国家資格ではなく、都道府県知事免許になります。そのため、都道府県知事が免許を発行します。
都道府県知事免許というと、「免許を発行してもらった都道府県以外のところに引っ越したら、免許は有効ではないの?」と心配になるかもしれませんが、引っ越しても本籍を変えなければ免許はそのまま使うことができますし、本籍を変えても、手続きをすれば准看護師免許は有効ですので、心配する必要はありません。
仕事内容の違い
正看護師と准看護師の仕事内容の違いについて説明します。正看護師と准看護師の仕事内容の違いを知るためには、「保健師助産師看護師法」の内容を確認しなければいけません。
まずは、正看護師に関する説明を引用します。
「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。
ちょっと難しいですが、要するに療養上の世話と医師の診察の補助をするのが看護師の仕事になります。
次に准看護師の定義を見てみましょう。
「准看護師」とは、都道府県知事の免許を受けて、医師、歯科医師又は看護師の指示を受けて、前条に規定することを行うことを業とする者をいう。
准看護師は、「医師、歯科医師、看護師の指示を受けて」という条件が付いています。つまり、准看護師が看護業務をするためには、自分の判断で行うことができず、看護師の指示を受けないと仕事ができないと法律で決められているのです。
看護師の指示を受けないと、看護業務ができないから、准看護師の給料は安いんですね。
ここまでは、建前上の説明です。実際は違います。臨床現場では、看護師も准看護師も同じように仕事をします。いちいち看護師が准看護師に指示をすることはありません。同じように働くのです。
だから、病院に行って、看護師を観察しても、誰が正看護師で誰が准看護師かはわからないと思います。ちなみに、違う病院で働く現役看護師が見ても、誰が看護師なのか、誰が准看護師なのかは判別できません。
法律上は正看護師と准看護師の仕事内容の違いはあっても、実際は違いはなく同じ仕事をしているのです。
将来性の違い
正看護師と准看護師は、将来性も違います。最近は、日本看護協会が認定している認定看護師や専門看護師の資格を取得する看護師が増えています。みんなキャリアアップしているのです。
ただ、この認定看護師や専門看護師は、正看護師しかチャレンジできません。准看護師からはキャリアアップできないのです。そのほかのいろいろな学会認定の資格も、資格取得要件を正看護師に限定しているものが少なくありません。
また、同じ看護職の中には助産師や保健師がありますが、助産師や保健師の養成学校に入学するためには、正看護師の資格を持っていなければいけないのです。
准看護師は将来性という意味では、正看護師よりもキャリアアップの道が閉ざされていて、不利になってしまいます。
また、職場での昇進も准看護師は不利です。准看護師では主任や師長などの管理職になれない病院が少なくありません。
職場の違い
正看護師と准看護師の違い、最後は職場の違いを見ていきましょう。正看護師と准看護師は同じ職場で働くことも多いです。
ただ、大学病院や総合病院などの大病院では准看護師を採用していないところが多いです。准看護師は、主に小規模病院や介護施設、クリニックなどで働くことになります。
これらの小規模病院や介護施設、クリニックは、准看護師だけでなく正看護師でも働くことができます。
そのため、正看護師に比べると、准看護師は職場の選択肢が狭くなります。准看護師が最先端の職場で働くのは難しいのです。
これからは准看護師よりも正看護師の方が有利!
もし、あなたが今、准看護師の資格を取ろうか、正看護師の資格を取ろうか迷っているなら、正看護師の資格を取ることをおすすめします。
正看護師を目指そうと思ったら、准看護師よりも1年間も多く学ばなければいけませんが、それでも准看護師よりも正看護師を目指したほうが有利なのです。
准看護師は廃止方向に…
今、看護界では准看護師問題という問題が起こっているのを知っていますか?厚生労働省と日本看護協会は、准看護師を廃止する方向で考えているのです。
実際に、神奈川県は准看護師の養成を廃止しています。今後は准看護師の養成は全国的に廃止方向に進む可能性が高いです。
もちろん、1度准看護師の資格を取得すれば、養成が廃止になったからといって、資格まで廃止されるわけではありません。准看護師の資格を取得したら、それはずっと有効です。
それでも、准看護師は今後廃止方向になることを考えると、今から准看護師の資格をあえて取得する必要はないのではないでしょうか?
生涯収入は断然正看護師!
もう1つ、准看護師ではなく正看護師の資格を取得すべき理由があります。それは、正看護師の方が給料が良いからです。
経済的なことを考えると、少しでも早く働きたいから、正看護師ではなく准看護師の資格を取得したいと考えている人もいると思います。確かに、准看護師なら2年間学べば、資格を取得できます。
ただ、先ほど説明したように、正看護師と准看護師では給料が1年で80万円も違うのです。例えば、あなたが25歳から看護職として働き始めたとしましょう。
定年を60歳とすると、35年間働くことになります。80万円×35年間=2800万円になります。
准看護師の資格を取得した場合、正看護師の資格を取得した場合に比べて、2800万円も損をすることになります。2800万円の損だと考えると、1年くらい何とか頑張れるのではないでしょうか?
ちなみに、この後詳しく説明しますが、准看護師の資格を取ってから正看護師の資格を取ろうと思ったら、2年間は学ばなくてはいけません。
正看護師の資格を取得するためには、3年間の勉強が必要。准看護師→正看護師なら合計4年の勉強が必要。これを考えると、やっぱり今のうちに正看護師の資格を取得したほうが良いと思いませんか?
奨学金を借りるなどの手段もありますので、准看護師と正看護師のどちらの資格を取得しようか迷っている人は、断然正看護師の資格を取得することをおすすめします。
准看護師から正看護師になる方法
今から正看護師か准看護師の資格を取得しようと思っている人は、正看護師の資格を取得すべきです。
でも、すでに准看護師の資格を持っている人は、どうすれば良いのでしょうか?すでに准看護師の資格を持っている人は、今からでも正看護師の資格を取得することをおすすめします。
准看護師から正看護師になるためには、次の3つの方法があります。
7年以上の経験があれば通信教育でOK
まずは、准看護師の経験が7年以上ある人向けの方法です。准看護師の経験が7年以上あれば、2年間の通信教育で正看護師の国家試験の受験資格を得ることができます。
通信教育で正看護師になるには、今までは10年間の経験が必要でしたが、2018年4月からは経験年数は7年に短縮されます。
通信教育でも、少しは学校に登校する必要はあるものの、基本は自宅で学ぶことができるので、准看護師として働きつつ、正看護師の資格を取得することができるのです。
全日制で2年間学ぶ
准看護師から正看護師になるための方法の2つ目は、全日制の養成所で2年間学ぶことです。この方法は、准看護師の経験は問われません。
ただ、全日制の学校に通学して学ぶことになりますので、フルタイムで働きながら正看護師の取得を目指すのは不可能です。
定時制で3年間学ぶ
准看護師から正看護師になるためには、定時制で3年間学ぶ方法もあります。この方法も准看護師の経験は問われません。
定時制で夜間を中心に学びますので、働きながら資格取得が可能です。ただ、3年次は昼間に実習をしなければいけないので、最後の1年は日中に通学しなければならず、仕事をするのは難しくなるでしょう。
それでも、全日制と比べると、准看護師の仕事と学業を両立しやすい環境が整えられています。
正看護師と准看護師の違い・准看護師から正看護師になる方法の総まとめ
・准看護師の特徴
「准看護師は「都道府県知事免許資格」「准看護師は平均年収が402万円」「准看護師は最低2年の教育が必要」「看護師の指示を受けないと仕事ができない」「准看護師では主任や師長などの管理職にはなれない」「小規模病院や介護施設、クリニックで働く」
・正看護師の特徴
「正看護師は平均年収が480万円」「全日制で2年間学ぶか、定時制で3年間学ぶ」「最低3年の養成機関で学ぶ」「最近は、准看護師の廃止方向で将来的に正看護師のほうが有利になる」「准看護師から正看護師になる方法は、7年以上の経験があれば通信教育でOK」「60歳定年で35年間だと2800万円の収入になる」「正看護師は「国家資格」
正看護師と准看護師の6つの違いや正看護師をおすすめする理由、准看護師から正看護師になる方法をまとめました。
准看護師は正看護師と同じような仕事をするのに、給料や将来性が大きく異なりますので、もしこれから看護師の資格を取得しようと思っている人は、准看護師ではなく正看護師の資格を取得しましょう。
また、すでに准看護師の資格を取得している人は、正看護師の資格取得を目指すと良いでしょう。