アトピー性皮膚炎の人は湿疹が出て、かゆくてかゆくて仕方がないし、見た目も肌が赤くなったり、乾燥したりするから、恥ずかしいと思っているのではないでしょうか。
アトピー性皮膚炎を完治させるのは難しいですが、症状を改善して、落ち着かせることは可能です。アトピーの原因や遺伝との関係、改善・治療方法をまとめました。
アトピーの原因
アトピー性皮膚炎の原因は何でしょうか?アトピー性皮膚炎は、肌のバリア機能が低下している状態です。
アトピー性皮膚炎は、肌のバリア機能が低下していますので、外部からの刺激が直接皮膚に届いてしまいます。そのため、知覚神経や免疫機能が過剰に反応してしまって、かゆみや痛み、かぶれ、湿疹などのアトピーの症状が出てしまうんです。
アトピーと遺伝の関係
アトピーの原因の1つ目は、遺伝です。親がアトピーなら子供も絶対にアトピーになるというわけではありませんが、遺伝に関係していることは間違いありません。
両親がともにアトピー体質だと、子どもは50%の確率でアトピーを発症し、片親がアトピー体質だと30%の確率で子どもがアトピーになるという統計があります。
また、アトピーはフィラグリン遺伝子という遺伝子に変異があると、発症しやすいことがわかっています。
2006年、スコットランドのグループにより、皮膚角層の主要な構成タンパク質であるフィラグリンの機能喪失変異が、アトピー性皮膚炎の主要な発症因子として報告された(Palmer, et al. Nat Genet 2006)。その後フィラグリン遺伝子変異は、アトピー性皮膚炎を有する気管支喘息、アレルギー性鼻炎、食物アレルギー等のアレルギー疾患の発症にも関連することが示された(McAleer, et al. J Allergy Clin Immunol 2013)。
引用:アトピー性皮膚炎克服プロジェクト – 実績・研究プロジェクト – 医療従事者のみなさま – 慶應義塾大学病院 皮膚科
フィラグリン遺伝子に変異があると、肌のバリア機能に異常が生じるため、アトピー性皮膚炎を発症しやすくなるのです。
このようにアトピー性皮膚炎は、遺伝的な要因が大きな病気なのです。
アトピーを悪化させる要因=アレルゲン
アトピーになるかどうかは、遺伝的な部分が大きいですが、アトピーを発症して悪化させるかどうかは、遺伝以外にもたくさんの原因があります。
アトピーを悪化させる要因はアレルゲンです。アレルゲンは、体内でアレルギー反応を起こしますので、アトピー性皮膚炎が悪化してしまうのです。
どれにアレルギー反応を示すかは、その人によってちがいますが、アトピーを悪化させるアレルゲンの代表的なものをご紹介します。
・ダニ
・花粉
・大気汚染(PM2.5)
・カビ
・動物の毛
これらが身近にある中で生活をしていると、アトピーが悪化してしまうリスクが高いんです。
アトピーを悪化させる要因=生活習慣や行動
アトピーを悪化させる要因は、アレルゲンだけではありません。日常的な生活習慣や行動の中にも、アトピーを悪化させる要因はたくさん潜んでいるんです。
・汗をかいたまま放置
・汚れた肌
・肌さわりが悪い衣服
・ストレス
・過労
・睡眠不足
・ストレス
このような要因は、アトピーを悪化させるんです。
肌のバリア機能が低下した状態で、刺激の強い石鹸やシャンプー、化粧品などを使ったり、チクチクするような服を着ていたり、汗をかいたまま放置したり、肌が汚れた状態のままだと、それが刺激になって、アトピーが悪化します。
アトピー性皮膚炎の人は、自分の汗さえも刺激になってしまうので注意が必要です。
また、ストレスや過労、睡眠不足、ストレスなどは、体の免疫力が低下しますし、肌のバリア機能も悪くなりますので、アトピーが悪化しやすい状態になってしまうんです。
アトピーの8つの改善・治療法
アトピーの人は、「アトピーは治らないし」、「遺伝だから仕方がない」と諦める必要はありません。アトピーは完治するのは難しいですが、症状を改善することは可能です。アトピーの改善方法や治療法を説明していきます。
徹底した保湿
アトピー性皮膚炎の人は、とにかく肌の保湿を徹底しましょう。アトピーの人は、肌の保湿成分であるセラミドが少ないので、乾燥肌になります。乾燥肌になると、外部からの刺激が直接肌に届くので、アトピーが悪化しやすいのです。
保湿をすることで表皮を整え、アレルゲンが肌に付着しても、過剰なアレルギー反応が起こらないようにしましょう。
理化学研究所の研究でも、肌の保湿をすることで、アトピーの発症を予防することができるかもしれないという可能性が示されています。
ヒトにおいてアトピー性皮膚炎患者は、発症後にならないと診断がつきませんが、未発症の皮膚でJAK1を含む信号伝達経路の活性化が起こっている場合、アトピー性皮膚炎を発症する可能性のあること、ワセリンを塗ることで発症が予防できる可能性が示されました。
そのため、アトピーの人は、とにかく保湿をしましょう。顔の肌の保湿をするのはもちろんですが、アトピー性皮膚炎は全身に症状が現れますので、全身の保湿も忘れないでください。
アトピー性皮膚炎の人は、特にセラミドが不足していることがわかっていますので、セラミド配合の保湿剤を使うと良いでしょう。セラミドは、肌の水分を閉じ込めてくれる成分のことです。
セラミド以外にも、次のような保湿成分は、アトピー性皮膚炎の人でも安心して使うことができますので、おすすめです。
・グルコース
・ヒアルロン酸
・トレハロース
・尿素
・ライスパワーエキス
これらの保湿成分が配合された保湿剤を使って、とことん保湿をしましょう。一般的な保湿クリームでは、すぐに乾燥してしまうという人は、ワセリンを使ってみるのも良いと思いますよ!
アレルゲンをなくす掃除
アトピーの改善方法、次はアレルゲンをなくす掃除です。アトピーの人はアレルゲンに触れると、アトピーが悪化してしまいますので、生活の中からアレルゲンを排除するようにしましょう。
アレルゲンをなくすためには、掃除が大切です。掃除をしっかり行うことで、室内のハウスダストや花粉、動物の毛などを取り除くことができます。
特に、ペットを飼っている人は、動物の毛が家の中に落ちていることが普通の状態で、動物の毛に自分ではなかなか気づかないこともありますので、こまめに掃除しておかないといけません。
また、寝具の清潔も保っておきましょう。寝ている時にはコップ1杯分の汗をかくと言われていますので、シーツや枕カバー、布団カバーは見た目以上に汚いんです。
そのため、こまめに洗濯をするようにしましょう。また、布団も干して乾燥させて下さい。湿った布団はダニの温床になりますので、アトピー性皮膚炎を悪化させる可能性があるんです。
寝具を清潔に保って、室内もピカピカにしておけば、アトピーは改善されると思います。
肌を清潔に保つ
アトピーのスキンケア方法、次は肌を清潔に保つことです。肌を不潔なままにしておくと、肌に雑菌がついて、それが繁殖し、刺激になってアトピーが悪化しますので、肌を清潔に保ちましょう。
シャワーは毎日浴びてください。ただ、アトピーの人は湯船にゆっくり入るのはおすすめできません。湯船に入っても良いのですが、短時間で出るようにしましょう。
湯船に長時間入っていると、肌の保湿成分が流れ出してしまうので、余計に肌が乾燥してしまうのです。そのため、お風呂に毎日入って、肌を清潔に保ちつつも、入浴は短時間で済ませてください。
入浴後は、すぐに保湿クリームを全身に塗って、水分を閉じ込めるようにしましょう。
肌への刺激を減らす
アトピーの人の改善方法、4つ目は肌へ刺激を減らすことです。アトピーの人は、肌に少しでも刺激があると、それに免疫機能が過剰に反応してしまって、アトピーの症状が悪化しますので、できるだけ肌への刺激を減らす必要があるのです。
・肌に優しい化粧品を使う
・薄化粧を心がける
・髪の毛が顔に当たらないようにする
・マスクは必要時以外はつけない
・肌触りの良い服を着る
・汗をかいたらすぐに拭く
・肌は擦らないようにする
このようなことに気を付けて、スキンケアをすれば、肌への刺激がなくなり、アトピー性皮膚炎を改善することができるでしょう。
規則正しい生活を送る
アトピーを改善するためには、規則正しい生活を送りましょう。規則正しい生活を送って、自律神経のバランスを整えることで、肌のターンオーバーを正常化することができますので、肌のバリア機能を強化することができます。
規則正しい生活をするためには、次のことに気を付けてください。
・早寝早起きをする
・1日3食しっかり食べる
・栄養のバランスを考える
・睡眠時間を確保する
・質の高い睡眠をとる
・適度な運動をする
・お酒やたばこは控えめに
このような生活を送っていれば、アトピーの症状が軽減して、肌質が改善していくはずです。
ストレスをなくす
アトピーの人の改善方法、6つ目はストレスをなくすことです。ストレスはアトピーを悪化させる要因ですので、ストレスはできるだけ排除しなければいけません。
アトピーの人は、ストレスを感じてアトピーが悪化し、アトピーが悪化したことにさらにストレスを感じるという悪循環に陥りやすいので、とにかくストレスを溜めこんではいけません。
日常生活の中から、できるだけストレスを排除しましょう。それでも、生活の中からストレスをすべて取り除くことはできないと思いますので、ストレスを溜めこまず、こまめに発散すると良いでしょう。
自分なりのストレス解消法を見つけておくと良いですよ!
腸内環境を整える
アトピーを改善するためには、腸内環境を整えましょう。アトピーの人は、腸内環境を整えることで、アトピーの症状を改善することができるのです。
腸には免疫細胞の60%が集まっています。ということは、腸内環境を整えると、免疫が活性化して、アトピーの原因となるIgE抗体を作られるのを抑えることができますので、外部からの刺激に過剰に反応することもなくなり、アトピー性皮膚炎の症状が改善するんです。
・発酵食品を食べる
・オリゴ糖を食べる
・食物繊維を摂取する
・腸を冷やさないようにする
・便秘を解消する
発酵食品を食べ、便秘を解消するなどの対策を実践すれば、腸内環境が良くなりますので、アトピーの症状が改善すると思います。
皮膚科を受診
アトピー性皮膚炎を治療するためには、皮膚科を受診しましょう。ご紹介した改善方法を実践しても、あまり改善しないという場合は、皮膚科を受診すべきです。
アトピーの治療は、外用薬と内服薬での治療が基本になります。外用薬はステロイド薬と免疫抑制外用薬、保湿剤の3種類になります。
内服薬は抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を内服して、かゆみの原因になるヒスタミンの分泌を抑えたり、アレルギー反応を抑えるようにします。
ただ、これらの薬で治療をしても、症状の改善が見られない場合は、ステロイドや免疫抑制薬の内服薬を使用することもあります。
アトピー性皮膚炎の治療にステロイド薬を使うことに抵抗がある人も多いと思いますが、医師の指示に従って、長期間連続して使用しなければ、安全に使用できます。心配な人は、医師に納得がいくまで説明してもらうと良いでしょう。
アトピーの原因・改善と治療方法についてのまとめ
・アトピーの原因
「アレルゲン」「生活習慣や行動」「遺伝との関係性は50%」
・アトピーの改善方法・治療法
「徹底した保湿」「アレルゲンをなくす掃除」「肌を清潔に保つ」「肌への刺激を減らす」「規則正しい生活をおくる」「ストレスをなくす」「腸内環境を整える」「皮膚科を受診する」
アトピーの原因や遺伝との関係、改善・治療法をまとめました。アトピー性皮膚炎は、遺伝の要素も大きいですが、スキンケア方法や日常生活に気を付けることで、症状を改善することができます。
セルフケアで改善できない時は、皮膚科を受診して、早めに治療するようにしてください。アトピーがひどいままで放置していると、それがストレスになって、さらにアトピーが悪化しますので、きちんと治療するようにしてくださいね。