夫からDVを受けている人、「これってDVかも?」と思っている人は、1人で悩まないでください。まずはDVに関する正しい知識を持つことが、DVから逃げるための第一歩です。
DVの定義や種類、DV被害者の心理、DVする夫の特徴、DVの原因などをまとめました。
DVの定義
DVとはドメスティック・バイオレンス(Domestic Violence)の略です。DVは配偶者や家族、恋人などの親しい人から、暴力を受けることです。
「ドメスティック・バイオレンス」の用語については、明確な定義はありませんが、日本では「配偶者や恋人など親密な関係にある、又はあった者から振るわれる暴力」という意味で使用されることが多いです。
DVは、配偶者などから受ける暴力ですので、男性(夫)から女性(妻)に対して行われる暴力と決めつけているわけではありません。妻から夫へのDVも存在するのは確かです。
でも、DVの事例のほとんどが夫から妻への暴力、つまり夫が加害者で妻が被害者なんです。
これは、男性が女性よりも力が強いという理由が大きいですが、日本には男尊女卑の考えが根強く残っていること、男性の方が収入が多く、女性が男性の収入に頼っているために、家庭内で男性の方が優位に立つことが多いことも原因と考えられます。
女性は収入が少ない、または専業主婦だとしても、家事・育児の負担が大きいので、家庭内の役割はきちんとイーブンになっているのですが、やはりどこかお金を稼いでいるほうが偉いという考えが夫にも妻にもあるんです。
そのため、夫から妻へのDVが多いんですね。
DVの4種類
DVには種類があります。どのようなことがDVになるのかを見ていきましょう。あなたはDVと思っていなかったことも、実はDVに当てはまり、あなたはDV被害者かもしれないんです。
身体的なDV
DVの種類の1つ目は、身体的なDVです。DVというと、まずはこれが思い浮かべる人が多いと思います。
身体的なDVには、次のようなものがあります。
・蹴る
・平手打ちをする
・バッドや瓶など物で殴る
・首を絞める
・髪の毛を引っ張る
・刃物を突き付ける
・物を投げつける
体を痛めつけるような暴力が、身体的な暴力になります。この身体的な暴力は犯罪です。傷害罪や暴行罪に当たります。これは、配偶者間であっても成立します。
だから、「旦那にやられたことだから。家族だから」と我慢する必要はないのです。身体的なDVを受けたら、あなたは犯罪の被害者なのですから。
精神的なDV
精神的なDVとは、相手の精神面を傷つける暴力です。DVは身体的な暴力だけではありません。精神的に傷つけること、恐怖を与えることもDVに該当するのです。
・殴るふりをする
・壁を殴る
・誰の金で飯を食えているんだ!などを言う
・人を馬鹿にしたり、命令したりする
・大切なものを勝手に捨てる
・電話や郵便などを細かくチェックする
・人付き合いを制限する
このようなことは、精神的なDVに該当します。束縛が過ぎるとDVになりますし、大声で怒鳴りつけるなど相手に恐怖を与える行為は、精神的なDVになるのです。
性的なDV
夫婦間・恋人間では、性的なDVも起こります。相手が嫌がっているのに、無理に性行為を求めることは、性的なDVに当てはまります。
・嫌がっているのにAVやポルノ雑誌を見せる
・避妊をしてくれない
・中絶を強要する
夫婦といえども、このようなことはDVになります。夫婦だって、双方同意の上で性行為をするのが当たり前のことなのです。
経済的なDV
DVの種類、最後は経済的なDVです。これは、精神的なDVに含まれる場合もあります。
・節約しているのに、無駄遣いしていると責める
このようなことは、経済的なDVに当てはまります。どうしてもお金がないというならともかく、夫は自分のお小遣いをたくさん使っているのに、妻に食費や医療費、子ども教育費などを渡さないのは、明らかに経済的なDVです。
この経済的なDVは、夫が1ヶ月の食費や子どもの教育費を知らないために起こることもあります。物価を知らないこと、無知ゆえのDVですね。
経済的なDVは家計簿を見せることで、すんなり解決する場合もあります。
DV被害者の心理
DV被害者の多くは、妻です。DV被害者の妻は、離婚せずに我慢している人が多いのです。なぜDV被害者の妻はDVから逃げずに我慢しているのか?
第三者から見ると、「DVを受けているなら、離婚してさっさと逃げれば良いのに」と思うことも多いですが、被害者にとっては逃げたくても逃げられないことが多いのです。
DV被害者の心理を考えてみましょう。
恐怖から逃げられない
DV被害者は、加害者から恐怖心を植え付けられています。そのため、恐怖心から逃げることができないのです。
もし、逃げたらもっとDVがひどくなるから怖いという心理ですね。DV被害者は逃げて、万が一追い付かれたら、今よりもさらに暴力が悪化するかもしれない、今度はころされるかもしれないという恐怖があるのです。
暴力がなければ良い人と思っている
DV被害者の妻は、夫を信じていることが多いです。詳しくは後で説明しますが、DVをする夫は、普段は優しいことが多いのです。
そのため、「殴らなければ良い人だから」と思っているんですね。夫のことを信じていて、心のどこかで「夫はそのうち変わってくれる」という心理を持っているため、逃げずに信じているのです。
でも、一度暴力をふるった人、DVをする人は、今後悪化することはあっても、治ること・変わることはほぼありません。
私がいないとダメだと思っている
DV被害者は加害者に対して、「この人は私がいないとダメなの」という心理を持っていることが多いです。「私がそばにいてあげなくちゃ、この人はダメになってしまう。」と思っているんですね。
共依存の関係になってしまっているのです。共依存の関係に陥っていると、DVを受けていても、なかなか離れられなくなってしまいます。
子供のために逃げられない
DVの被害者である妻は、子供がいるために逃げられないこともあります。子供と一緒に逃げたら、子供にも暴力を振るうようになるかもしれない。
子供にとっては優しい父親だから、父親がいなくなるのは、子供にとっては良くないことではないか。子供のため、子供の安全のためという心理が働くと、なかなか逃げることができないのです。
経済的な問題で逃げられない
DVの被害者である妻は、経済的な問題で夫から逃げられないこともあります。これは、専業主婦の妻に多い理由ですね。
専業主婦で全く収入がないと、離婚した後の生活がままならない。特に、子供がいる場合、自分1人では育てていけないと考えて、逃げられないのです。
また、夫から経済的なDVを受けていると、必要最低限のお金しか渡されていないので、逃げたくても逃げられない、バス代や電車代すらないこともありますね。
DVする夫の6つの特徴
DVする夫はどんな特徴を持っているのでしょうか?DVをする夫というと、粗暴なイメージを持っているかもしれません。
確かに、粗暴な人も多いですが、社会的地位があって、人当たりが良いような人、周囲の人から見ると、「え?あの人がDVするの?まさか!」と思われるような夫がDVをすることもあるのです。
DVする夫の特徴を6つご紹介します。
妻を支配したい、所有物だと思っている
DVする夫の特徴は、妻を支配したいと思っていることです。妻は自分の所有物だと勘違いしている人は、DVをする傾向があります。
妻は自分の所有物だと思っていると、自分の思い通りに妻が振舞わないと、暴力で支配しようとします。また、支配するために、外出を制限したり、妻の交友関係を逐一チェックして、制限させたりするのです。
DVする夫は、妻が積極的に外に出ること、いろいろな人と会うことを喜びません。できるだけ家の中にいさせて、外の世界との接触を絶たせようとする人が多いです。
暴力の後は異常に優しい
DVする夫は、暴力をふるった後は優しいという特徴があります。さっきまで殴る蹴るの暴力をふるっていたのに、怒りが落ち着いたら、いきなり優しくなることが多いんです。
「ごめんね。こんなつもりじゃなかったんだ。もう二度としないから。」のように言って、一時的に異常に優しくなります。ただ、また少し経つと、DVをしてくるのです。
DVをする夫は、緊張期→爆発期→ハネムーン期を繰り返すようになります。緊張期は怒りを溜め、爆発期でDVをし、ハネムーン期で異常に優しくなる。
ずっとこのサイクルの繰り返しです。ハネムーン期に騙されて、「きっとこの人は変わってくれる。暴力がなければ優しい人」のように夫を信じ続ける妻もいます。
何度も言いますが、暴力の後に優しいのは、あくまで一時的なものです。またすぐにDVをしてきます。
依存症の人も多い
DVをする夫は、依存症になっている人も少なくありません。
・薬物依存症
・ギャンブル依存症
依存症の夫は、アルコールや薬物など依存しているものが切れると、イライラして、情緒不安定になるので、そのストレスを妻にDVという形でぶつけてくることが多いのです。
このタイプはまずは精神科に夫を受診させることが重要になりますが、DVをする夫の場合、依存症であることを認めず、精神科の受診を勧めた妻に暴力をふるうことがあるので、なかなかうまく受診に至らないことが多いんです。
暴力をふるうのは妻が悪いからと思っている
DVをする夫は、自分が暴力をふるうのは妻が悪いからだと信じ込んでいるケースが多いです。「僕は好きで君を殴っているんじゃない。君は殴られないとわからないだろう?」のように自分を正当化して、妻が悪いと責任転嫁をします。
自分は好きでDVをしているわけではない。しぶしぶ仕方がなく、妻のために殴っているだけだという思考回路ですね。
DVの夫は罪悪感が全くないので、少しずつDVがエスカレートしていくことも多いので、DV自体も悪いですが、このような言動をするDV夫にはより注意が必要です。
精神的に幼く感情の起伏が激しい
DVをする夫は、精神的に幼く、感情の起伏が激しいことが特徴です。
今までニコニコ笑っていたのに、突然怒り出して、暴力をふるう。暴力をふるった後すぐに、泣きながら「ごめんね。ごめんね。もうしないから」のように謝ってくる。
これは、DV夫あるあるですね。DVする夫は、すぐにすねたり、気に入らないことがあると怒りだしたりするので、精神的に未発達の人が多いのです。
ただ、会社や友人の前では大人の男性のようにふるまっていて、社会的評価は高いのに、妻であるあなたの前では精神的に幼くなることもあります。
その姿を見て、「私の前では本当の姿を見せてくれている」と喜んではいけません。あなたをDVの標的、ストレス発散の道具としてみているから、そのような態度をとっているだけです。
過去にDVを受けていたことがある
DVする夫の中には、過去に自分もDVを受けていたという人もいます。父親や母親からDVを受けていた人は、絶対に自分ではDVをしないと誓い、実際にそのようにする人もたくさんいます。
でも、自分ではDVをしないと誓っても、幼いころからDVが身近にあったために、怒りの解決方法として、DVをするのは普通のことであるという深層心理を持っていて、DVへのハードルが非常に低くなっている人もいます。
また、自分は直接DVを受けていなくても、父親が母親にDVをしていたのを目撃していた場合も、DVへのハードルが低くなることがあります。
もちろん、全員がそうであるというわけではありませんが、DVは連鎖するとされているのです。
DVの原因はすべて加害者にある
DVの被害者は「私も悪いの。旦那が悪いわけではないから」と思っているかもしれませんが、それは間違いです。
DVの原因は、すべて加害者にあります。加害者側にどんな事情があろうと、例え過去に両親からDVを受けていたとしても、DVの原因は加害者にあります。
DVは100%加害者が悪いのです。被害者側の原因は一切ありません。
「私の料理が下手だから、殴られるの。」とか「私がブスだから」、「私がトロいから」のように自分にも責任があると考える人がいます。
でも、よく考えて下さい。たとえ、あなたの料理が下手でも、掃除が下手でも、DVする必要はありませんよね。言葉で理論的に注意すれば、それで済むはずです。殴ったり、蹴ったり、大越で怒鳴る必要な一切ないのです。
だから、DVの原因はすべて加害者にあるのです。そこだけは勘違いしないでください。今、あなたがDVを受けているなら、あなたは一切悪くありません。100%相手が悪いのです。
DVかもと思ったら、1人で悩まないで
DVを受けている人、または「これってDVなのかな?」と思っている人は、1人で悩まないでください。先ほども説明しましたが、DVの被害者はなかなか逃げ出せないことも多いと思います。
たとえ、今は逃げ出せないとしても、1人で悩まずに誰か信頼できる人に相談してください。
誰かに相談することで、その人があなたの味方になってくれます。逃げ出すための背中を押してくれることもあるでしょうし、逃げる時に手伝ってくれることもあるでしょう。
また、相談しておくことで、必要な時にあなたがDVを受けていたことを証言してくれることもあります。
だから、1人で悩まないでください。信頼できる人が周囲にいないなら、行政機関に相談することもできます。1人で悩んでいても、何も解決しません。それどころか、DVがどんどん悪化していく可能性もあります。
DVを受けている今の状況を打破するためには、まずは誰かに相談することが大切なのです。
DVについての総まとめ
・DVの事例のほとんどは、夫から妻への暴力が多い傾向にある
・身体的なDV:殴る蹴る、平手打ち、バットや瓶で殴る、首を締めるなど
・精神的なDV:大声で怒鳴る、殴るフリをする、壁を蹴る、人をバカにしたり命令したりするなど
・性的なDV:嫌がっているのに性行為をする、AVやポルノ雑誌を見せる。避妊をしてくれない、中絶を強要するなど
・経済的なDV:生活費を渡さない、節約しているのに無駄遣いをしていると責めてくる
・DV被害者の心理
「恐怖から逃げられない」「暴力がなければ、普段は優しいと信じている」「私がいないとダメだと思っている」「子供のために逃げられない」「経済的な問題で逃げられない」
・DVする夫の特徴
「妻を支配したい」「所有物だと思っている」「暴力の後は異常に優しい」「アルコールや薬物、ギャンブル依存症の人も多い」「暴力をふるうのは妻が悪いからと思っている」「精神的に幼く、感情の起伏が激しい」「過去に自身がDVを受けていたことがある」
・DVの原因はすべて加害者にあり、被害者にはない
・DVだと思ったら1人で悩まずに信頼できる人に相談すること
DVの定義や種類、DV被害者の心理、DVする夫の特徴などをまとめました。DV被害者は恐怖や共依存などから、逃げ出すのは難しいこともあります。
でも、DVを我慢していると、そのDVはどんどん悪化していくだけです。あなたが幸せになるためにも、まずは誰か信頼できる人に相談するようにしましょう。