赤ちゃんが欲しいのに、なかなか妊娠しないと悩んでいる女性は多いですよね。不妊はとてもデリケートな問題なので、周囲の人に相談しにくく、自分1人で悩んでいる人が多いんです。
不妊症の定義と男女別の原因、不妊症の男女の割合、不妊症になりやすい人の特徴、不妊症の治療方法をまとめました。不妊に悩んでいる人は、ぜひ読んでみてください。
不妊症の定義
不妊症とは、妊娠を望んでいるのに、なかなか妊娠しない状態のことです。健康な男女が妊娠を望んでいて、避妊をせずに一般的な夫婦生活をしているのに、1年以上妊娠できないことを不妊症と定義しています。
この「1年」という期間は、2009年にWHO(世界保健機構)が定義しています。また、以前は、日本産婦人科学会は2年以上妊娠できない場合を不妊症と定義していましたが、2015年(平成27年)に2年から1年に、不妊症の定義を短縮しています。
一般的に、避妊を行わず一般的な夫婦生活も行っている場合、全体の80%の夫婦が1年以内に赤ちゃんを授かることができ、2年以内になると90%の夫婦が赤ちゃんを授かることができるとされています。
妊娠を望んで夫婦生活を行っている場合、1年以内に80%の夫婦が妊娠するので、不妊症の定義は「1年」とされているんですね。
また、アメリカの生殖医学会では、不妊症は1年間の不妊期間を持つものとしているのですが、女性の年齢が35歳以上の場合は、6ヶ月以上不妊期間があったら、検査を開始したほうが良いとしています。
不妊症とは妊娠したいのに1年以上妊娠できない場合のことを言いますので、1年以上妊娠できない人は、産婦人科を受診して、不妊の検査を受けたほうが良いでしょう。
ただ、女性が35歳以上になると、不妊症ではなくても、自然妊娠できる可能性が低くなりますので、妊娠を望んでいるのに6ヶ月以上妊娠しない時は、産婦人科を受診するようにして下さい。
不妊症の男女別の原因
不妊症の原因について説明していきます。不妊症の原因というと、女性側の原因ばかりがクローズアップされますが、男性側が原因の不妊もあるのです。
男性側の不妊症の原因と女性側の不妊症の原因をそれぞれ詳しく見ていきましょう。
不妊症の男性側の原因
不妊症の男性側の原因は、加齢と性機能障害、精路通過障害、造精機能障害の4つがあります。
■加齢
女性は35歳を過ぎると、卵子の老化によって妊娠しにくくなり、閉経すれば妊娠することはありません。これは、有名なことだと思います。
でも、男性は年齢に関係なく、生殖能力があるとされています。確かに、70代でも妊娠させることは可能です。
ただ、20代の精子と70代の精子では精子の質が異なります。加齢によって精子の質は低下しますので、男性は年齢ととも妊娠させる力が衰えていきます。
「男子の場合、年齢は関係ない!」というのは大きな間違いなのです。
■性機能障害
性機能障害には勃起障害(ED)や勃起はするけれど膣内射精ができない膣内射精障害があります。
性機能障害の原因には、ストレスやプレッシャーなどがあります。仕事などのストレスを抱えていると、EDになりやすいですし、妊娠に向けてのプレッシャーで性機能障害が起こることがあるんです。
後に説明するタイミング法で、「妊娠するために、今日はセックスしないといけない!」という場合、デリケートな男性はプレッシャーを感じて、EDになることがあるのです。
また、ストレスやプレッシャーなど精神的な原因だけではなく、糖尿病や動脈硬化などの病気も性機能障害の原因になるんです。
糖尿病は軽度でもEDになりますし、重症になると射精障害になることがあるのです。
■精路通過障害
精巣からペニスの先端までの精管が詰まっていると、精子を排出することができません。射精はできても、精子は排出できないことがあるんです。
以前に精巣上体炎などを起こしていると、炎症によって癒着が起きて、精管が詰まり、精路通過障害が起こることがあります。
■造精機能障害
精巣での精子形成や精巣上体での精子の運動脳獲得過程に異常がある場合、精子の数が少なかったり、精子運動率の低下や奇形率の上昇が見られますので、受精しにくくなります。
また、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症や停留精巣の術後、耳下腺炎性精巣炎によって、精巣で精子が作られず、無精子症になることもあります。
不妊症の女性側の原因
女性側の不妊症の原因には、排卵因子と卵管因子、頸管因子、免疫因子、子宮因子の5つがあります。
■排卵因子
女性側の不妊症の原因の1つ目は、排卵が起こらないことです。無排卵ですね。卵子が排出されなければ、妊娠することあはありません。
無排卵になる原因には、女性ホルモンの分泌に影響を及ぼす甲状腺などの病気や過度のダイエット、拒食症、過度の肥満、多嚢胞性卵巣症候群(男性ホルモン過多になる疾患)などがあります。
■卵管因子
卵管に癒着が起こっていると、受精卵が子宮に戻って着床することができませんので、妊娠することができません。
出典:jsog.or.jp
卵管が癒着する原因は炎症や子宮内膜症です。性感染症に感染して、それが進行すると、卵管にまで炎症が広がって、卵管がくっついてしまい、詰まってしまうんです。
また、子宮内膜症でも、卵管に子宮内膜が発生することで、癒着が起こって卵管が詰まる可能性があります。
■頸管因子
子宮の入り口の部分である子宮頸管に、何か問題があると、精子が通過できなくなるので、妊娠しにくくなります。
子宮の形状が精子の通過に適していなかったり、通過を手助けする粘液の分泌が少なかったりする場合、不妊症の原因になるのです。
■免疫因子
女性にとって、精子は異物になりますよね。それでも、免疫機能は精子を異物をみなすことはないので、精子が子宮内に進入しても、攻撃をすることはありません。
でも、免疫機能に異常があり、抗精子抗体や精子不動化抗体を持っている女性の場合、精子が子宮内に進入すると、免疫機能が精子を攻撃したり、精子の運動性を低下させてしまいますので、妊娠しにくくなってしまいます。
■子宮因子
不妊症の原因、最後は子宮の問題です。先天的に子宮の形状異常があったり、子宮筋腫があって、子宮の形状に異常があると、受精卵が着床しにくくなります。
また、子宮内膜の血流が悪い、子宮内に癒着があると、着床しても、順調に成長していかないので、不妊症になってしまいます。
不妊症の割合は?
不妊症に悩むカップルはどのくらいいるのでしょうか?不妊症のカップルは6~7組に1組とされています。
不妊症の原因の男女の割合は、次のようになっています。
出典:男性不妊治療|石川病院
WHOの調査によると、女性側に原因がある場合が41%、男性側に原因がある場合が24%、男女ともに原因がある場合が24%、原因不明が11%となっています。
また、詳細な原因は次のようになっています。
・排卵因子=20%
・卵管因子=10%
・子宮因子=15%
・子宮内膜症=20%
・造精機能障害や性機能障害=35%
・2人に原因がある場合=15%
・原因不明=20%
出典:不妊症についての基礎知識:不妊症の原因 東京 中央区 銀座 不妊治療【銀座レディースクリニック】
不妊症になりやすい人の特徴は?チェックリストで確認!
不妊症になりやすい人の特徴にはどのようなものがあるのでしょうか?「私、不妊症かも?」と悩んでいる人は、次のチェックリストで確認してみましょう。
不妊症になりやすい人の特徴~女性編~
□生理周期が不規則
□月経量が異常
□生理痛が重い
□性感染症の既往がある
□腹部手術をしていて、腹膜炎やイレウスを起こしたことがある
□子宮筋腫や子宮内膜症の既往がある
□35歳以上である
□不規則な生活を送っている
□喫煙している
□冷え性である
不妊症になりやすい人の特徴~男性編~
□幼少期にヘルニアや停留精巣の手術を受けた
□おたふく風邪(流行性耳下腺炎)で高熱を出した
□糖尿病を指摘されている
□小児がんの既往がある
□喫煙している
□過度の飲酒をしている
□仕事が激務でストレスが溜まっている
□肥満気味である
不妊症の5つの治療方法
不妊症の治療方法を説明していきます。不妊症の治療は、大きく5つに分けることができます。
不妊治療への不安を解消するために、どのような治療をするのかを知っておきましょう。
原疾患の治療
不妊症の治療の1つ目は、原疾患を治療することです。例えば、無排卵の女性は、ホルモンバランスを整えたり、排卵を促すような服薬治療をすることで、排卵できるようになりますので、妊娠できるようになります。
また、子宮内膜症や子宮筋腫の治療を行ったり、糖尿病を治療を行うなど、不妊症の原因となっている治療をすることが、不妊症の治療の第一歩になります。
タイミング法
不妊症の治療の2つ目は、タイミング法です。タイミング法は、原疾患の治療を進めつつ、同時に行われる治療法です。男女ともに明らかな治療がない場合も、まずはタイミング法で不妊症の治療を行います。
妊娠しやすい時期があることを知っていますか?女性には、排卵日がありますね。卵子の生存期間は24時間、精子は5日間とされています。ということは、排卵日の5日前から排卵日翌日までが妊娠可能な時期になります。
特に、排卵日1~2日前に性交すると、最も妊娠しやすいとされています。
おりものの状態、卵胞の大きさ、血液検査などから排卵日を正確に割り出して、それを目安に夫婦生活を営むように指導するのが、タイミング法です。
タイミング法は自然妊娠しやすいようにする治療法になります。ただ、排卵の状態によっては、排卵誘発剤を使用しながら、タイミング法を実践する場合もあります。
人工授精
不妊症の治療の3つ目は、人工授精です。人工授精は、精液を子宮内に注入して、妊娠を目指す治療法です。
人工授精はタイミング法を行っても、なかなか妊娠できない場合に適応となります。また、次のような場合にも、人工授精の適応となります。
・精子の数が少ない
・精子の運動率が悪い
・抗精子抗体を持っている(免疫異常)
・フーナーテストの結果が悪い
フーナーテストとは、性交後に子宮頸管の粘液内にある精子の状態を確認する検査です。性交後に子宮頸管部で精子の動きが悪いと、精子が子宮内に達することができないので、妊娠できる可能性が低くなります。
その場合は、人工授精で精液を直接子宮内に注入することで、妊娠しやすくなるのです。
体外受精
不妊症の治療方法、4つ目は体外受精です。体外受精は、卵子と精子を採取して、体外で受精させ、受精卵を子宮内に戻すという治療方法になります。
体外受精は、次のようなカップルに適応になります。
・人工授精で妊娠を試みても、妊娠しない場合
・男性側の不妊、特に精子に問題がある場合
・卵管の癒着で着床できない場合
顕微授精
出典:ivf-asada.jp
不妊症の治療方法の最後は、顕微授精です。顕微授精は体外受精の一種です。顕微授精は顕微鏡を用いて、ガラス管に入れた精子を、直接卵子に注入することで受精させる方法です。
体外受精は精子の力で卵子と受精させますが、顕微授精は人為的に卵子に精子を注入させる方法になります。
顕微授精は、次のようなカップルが適応となる治療法です。
・精子の運動不良の割合が高い場合
不妊症の定義・原因・割合・治療方法についてのまとめ
・不妊症の定義「1年以上妊娠できないこと」
・不妊症の原因(男性)
「加齢」「性機能障害」「精路通過障害」「造精機能障害」
・不妊症の原因(女性)
「排卵因子」「卵管因子」「頸管因子」「免疫因子」「子宮因子」
・不妊症の割合「6~7組に1組」女性側に原因41%。男性側に原因24%
・不妊症の治療法
「原疾患の治療」「タイミング法」「人工授精」「体外受精」「顕微授精」
不妊症の定義や原因、割合、不妊症になりやすい人の特徴、治療方法をまとめました。6組に1組が不妊症に悩んでいるとされていますので、不妊症は決して珍しいものではありません。
そのため、1年以上妊娠をしないという場合は、早めに産婦人科を受診してください。夫婦の年齢が上がれば上がるほど、妊娠の確率は下がります。
特に、女性は35歳以上になると、妊娠しにくくなりますので、早めに受診をしたほうが良いでしょう。