臨月になると、陣痛が来て破水があり出産するという流れになりますが、すべての妊婦さんがこの流れで出産できるわけではありません。陣痛が来る前に破水する可能性もあるのです。
破水の種類や原因、破水か尿漏れかの見分け方をまとめました。破水に気づかないと赤ちゃんの命が危険になることもありますので、妊婦さんは破水について正しい知識を持っておきましょう。
この記事の目次
破水とは?
破水とは卵膜が破れて羊水が膣から流出することを言います。子宮の中で、赤ちゃんは羊水に満たされた卵膜の中にいるのですが、卵膜が破れると、中の羊水が流れ出してしまいます。
出産する時は必ず破水が起こりますので、破水することは異常なことではありません。でも、正しいタイミングで破水が起こらなかった場合、赤ちゃんが危険にさらされることもあるのです。
破水の4つの種類と特徴
破水には適時破水、早期破水、前期破水、高位破水の4種類があります。
適時破水
適時破水とは、正しいタイミングで破水したことです。通常の破水は、陣痛が来て、子宮口が全開(10センチ)になるころに起こります。
この適時破水は適切なタイミングで起こった破水ですので、何の問題もありませんし、赤ちゃんへの悪影響もありません。
早期破水
早期破水とは、少しだけフライングして破水したことです。適時破水は陣痛→子宮口全開→破水→出産という流れですが、早期破水は陣痛→破水→子宮口全開→出産という流れになります。
つまり、子宮口が全開になる前に破水してしまったことですね。これは、少しフライング気味の破水ですが、陣痛が既に起こっているので、心配のない破水です。
陣痛開始後、子宮口が全開大する前に起こる場合を、“早期破水”といいます。
この“適時破水”と“早期破水”は正常の分娩経過であり、問題になることはありません。
引用:いのうえクリニック
前期破水
前期破水とは陣痛が来る前に破水してしまった場合です。これは、妊娠週数によって対応が違います。妊娠35週を過ぎていれば、前期破水が起こってもそんなに問題にはなりません。
妊娠35週以降に前期破水が起こったら、病院へ行って、陣痛が来るのを待ちます。もし、破水してから24時間以内に陣痛が来なかったら、陣痛促進剤などを用いて、誘発分娩を行います。
もし、35週未満で前期破水が起こった場合は、まだ赤ちゃんが未熟な状態ですから、入院しながら妊娠期間をできるだけ引き延ばすような処置を行います。
高位破水
破水の4種類目は、高位破水です。高位破水とは卵膜が子宮口に近い部分ではなく、上部が破れてしまうことで起こる破水で、前期破水で起こりやすいという特徴があります。
子宮口付近が破れると低位破水は、一気に羊水が出てくるのに対し、高位破水は少しずつしか羊水が出てこないので、破水したことに気づかないことがあるのです。
破水の原因~病気による破水~
破水の原因は病気や異常によるものと、日常生活内で起こるものの2つに分けられます。まずは、病気や異常による破水の原因をご紹介します。
感染症
細菌に感染し、絨毛膜羊膜炎を起こすと、卵膜が脆くなって破水しやすくなります。前期破水による早産の多くの原因が、この絨毛膜羊膜炎と言われています。
絨毛膜羊膜炎は頸管の組織プロスタグランディン産生を亢進させ、子宮収縮をおこす。子宮収縮は子宮内圧を増加させ、子宮口の開大とともに破水をひきおこす。
絨毛膜羊膜炎を引き起こす原因菌には、クラミジアや淋病、B型溶連菌などがあります。
頸管無力症
頸管無力症とは、子宮頸管が緩く開いてしまう状態です。本来なら、子宮頸管はしっかり閉じて赤ちゃんが子宮の外に出ないように支えています。
でも、子宮頸管が緩く開いてきてしまうことがあります。そうすると、卵膜が子宮から膣に垂れ下がって、破水しやすくなってしますのです。
羊水過多症
羊水が多くなりすぎることでも、破水を引き起こします。羊水が800ml以上になると、羊水過多症と診断されることが多いのですが、羊水が多すぎると、卵膜が破裂しやすいので破水を起こしやすくなります。
羊水過多は多胎(特に双胎間輸血症候群)や胎児の大動脈狭窄、母体の妊娠糖尿病などが原因で引き起こされます。
破水の原因~日常生活内で起こるもの~
日常生活を送っているだけでも破水を起こすことがあります。破水の原因となるものは、次のようなものがあります。
・重いものを持つ
・激しい咳やくしゃみをする
・妊娠中の性交
・激しすぎる胎動
あまりに卵膜や子宮に衝撃を与えると、卵膜が破れてしまうリスクがありますので、妊娠中は破水予防のためにも穏やかに過ごしたほうが良いでしょう。
これ以外にも、喫煙や高齢妊娠は前期破水のリスクを上げる要因とされています。
破水に気づかないとどうなるの?
前期破水を起こし場合、すぐに病院に連絡をして入院となります。卵膜の子宮口に近い部分が敗れれば、羊水が一気にジャバーっと出てしまうので、すぐに破水したことに気づきますが、高位破水はチョロチョロとしかでないので、破水に気づきにくいのです。
では、破水したのに気づかずに、適切な対処をしなかったら、どんな影響があるのでしょうか?
感染のリスク
前期破水した場合の最大のリスクが、感染です。通常は、赤ちゃんは卵膜に覆われていますので、細菌などの病原体が侵入できないようになっていますが、卵膜が破れてしまえば、そこから病原体が侵入して羊水で感染を起こし、赤ちゃんにまで感染が及ぶことがあります。
感染予防のためにも、35週未満で前期破水して妊娠期間を引き延ばす必要がある場合には、予防的に抗生剤を投与して、感染予防をするのです。
35週以降で前期破水した場合は、そのまま陣痛を待って、24時間以内に陣痛が来なければ誘発分娩をするので、抗生剤は投与しません。
ただ、自宅で破水した場合、入院前にシャワーを浴びようとするママがいますが、感染リスクがありますので、シャワーを浴びずに病院に向かうようにしましょう。
胎児仮死のリスク
前期破水したら、胎児仮死(胎児ジストレス)のリスクもあります。
それは臍の緒(臍帯と言います)が、羊水と一緒に胎児の又の間から子宮の外に出てしまうことがあるのです。これを臍帯脱出といいますが、陣痛が来ると臍帯が子宮の出口(子宮口)で締め付けられ血流が止まり胎児が仮死状態になります。
また、羊水が少なくなりすぎることで、胎児仮死になることもあります。
早産のリスク
破水をすると、プロスタグランジンという物質が分泌されるようになります。プロスタグランジンは、子宮を収縮させて陣痛を起こす作用がありますので、破水すると早産になる可能性が大きいのです。
早産でも35週以降であれば、赤ちゃんにはほとんど影響はないとされていますが、35週未満はまだ赤ちゃんの器官や機能が未熟な状態で生まれてくるため、後遺症が残ることもありますし、死産になる可能性もあるのです。
破水と尿漏れの4つの見分け方
破水があったら、35週以降だろうと35週未満だろうと、すぐに病院を受診して、入院する必要があります。
羊水がドバーっと出てくれば、すぐに破水したことがわかりますが、高位破水でチョロチョロしかでてこない場合、破水したかどうかわからないこともあります。特に臨月間近の妊婦さんは、尿漏れに悩む人も多いですから。
破水なのか尿漏れなのかを正しい見分け方を4つ説明していきます。
色をチェック
「破水?尿漏れ?」と迷ったら、まずは色をチェックしましょう。破水した羊水の色は無色透明、乳白色、薄いピンク色のことが多いです。薄いピンク色なのは、おしるしが混じっているからですね。
それに対し、尿はやや黄色がかった色ですので、下着やおりものシートについた色を見て、破水か尿漏れかをチェックしましょう。
臭いをチェック
次は臭いをチェックです。尿は当然ながらアンモニア臭がします。羊水はアンモニア臭はありません。羊水の臭いは人それぞれですが、「生臭い」と表現する人が多いです。
明らかに尿とは違う臭いのものが出てきたら、破水の可能性が高いです。
出方はどうか
次は、出方を確認しましょう。卵膜の下の部分が破れれば、破水したことがすぐに分かるくらいの量の羊水が勢いよく出てきます。
でも、高位破水の場合は、少量ずつチョロチョロと絶えず出てくることが多いです。また、破れ具合によっては、いつも出てくるわけではなく、立ったり座ったりと動いた時に出ることもあります。
尿漏れは笑ったりくしゃみした時に出ることが多いので、出方の違いでも破水なのか尿漏れなのかを確認することができます。
自力で止められるか
最後は自分で止められるかどうかを試してみましょう。尿漏れは下腹部に力を入れれば、自分の意志で止められます。
それに対し、破水は下腹部に力を入れても、自分の意志では止めることができません。お腹に力を入れても、どんどん出てくる場合は、破水した可能性高いでしょう。
心配な時な産婦人科へ電話を
破水と尿漏れの見分け方を4つ紹介しましたが、それでも破水なのか尿漏れなのかわからない、自信が持てないという人もいるでしょう。そういう人は、かかりつけの産婦人科に電話して相談してみましょう。
もし、破水していたら、すぐに病院に行って入院しなければいけません。また、わざわざ産婦人科を受診したのに、ただの尿漏れだったら、時間と労力の無駄ですよね。
そのため、破水か尿漏れか迷ったら、産婦人科へ電話して、相談すると良いでしょう。色や臭い、量などを伝えれば、どうすべきかをアドバイスしてくれるはずです。そして、そのアドバイスに従うようにしましょう。
破水の種類や前期破水の原因・破水と尿漏れの見分け方についてのまとめ
・適時破水:陣痛が来て子宮口が全開になる時に起こる
・.早期破水:少しだけフライングして破水すること
・前期破水:陣痛が来る前に破水してしまうケース。35週未満の場合は、入院することも
・高位破水:子宮の上部が破れてしまう破水。破水したことに気がつかないケースが多い
・破水に気づかないと、赤ちゃんにまで感染したり、胎児仮死や早産のリスクが伴う
・破水の原因
「感染症や頸管無力症、羊水過多症などの病気で起こることがある」「重いものを持つ」「激しい咳やくしゃみをする」「妊娠中の性交」「激しすぎる胎動」
・破水と尿漏れの見分け方
「羊水の色は、無色透明か乳白色、または薄いピンク色」「生臭いにおいがしたら注意」「立ったり座ったりするときに出てくる場合がある」「自力で止められるかどうか」「破水したか心配な人は、産婦人科に電話する」
破水の種類や前期破水の原因、破水と尿漏れの見分け方をまとめました。破水が起こったら、すぐに病院に行けるようにするために、早めに病院への交通手段を確保しておきましょう。
病院への交通手段でおすすめなのは、陣痛タクシーです。陣痛タクシーは24時間365日対応してくれて、破水していても病院まで送ってくれますので、早めに陣痛タクシーに登録しておくと安心ですよ。