妊娠・出産はとてもうれしい事なのに、妊娠中や出産後になぜか気持ちが落ち込む、涙が出てきてしまうということがあります。そして、そんな自分を責めてしまう女性もいるのではないでしょうか?
妊娠中や出産後に気持ちが落ち込むことをマタニティブルーと言います。マタニティブルーは決して珍しいものではなく、むしろ生理的な現象とも言える当たり前のものなんです。
マタニティブルーの6つの原因や産後うつとの違い、マタニティブル―を解消して産後うつにならないための6つの対処法をまとめました。
この記事の目次
マタニティブルーとは?
マタニティブルーとは出産後すぐに現れる抑うつ症状のことです。出産後3~5日で抑うつ症状はピークを迎え、出産後2週間以内にはその症状が自然と消えていきます。
マタニティーブルーを経験される方は非常に多く、出産をした母親の約半数に認められる症状だと言われています。
マタニティブルーは出産した女性の50%に認められる症状ですので、決して珍しいことではなく、むしろ当たり前のことなのです。当たり前のことですから、病気というわけでもありません。
ですから、「出産して嬉しいはずなのに、なんで気分が落ち込むんだろう?母親失格なのかも…」と自分を責める必要はありません。
妊娠中に鬱っぽくなることも
マタニティブルーは、基本的に出産後の抑うつ症状のことを指しますが、妊娠中に抑うつ症状が出ることもあります。
広義的な意味では、妊娠中の抑うつ症状もマタニティブルーに含まれます。もしかしたら、妊娠中の気分の落ち込みをマタニティブルーと認識している人の方が多いかもしれませんね。
妊娠中も気分の落ち込み、抑うつ症状が出ることがあります。
妊娠中のうつ病ですが、以前は少なかったこの症状が、最近は、特に妊娠初期に一割程度の女性に、うつ病や抑うつ症状が現れることがわかっています。
妊娠中に気分が落ち込むことも、特に珍しいことではないのです。
マタニティブルーの症状
マタニティブルーの症状は、抑うつ症状が基本ですが、それ以外にも様々な症状が現れます。
・なんとなく気分が落ち込む
・わけもなく不安になる
・イライラする
・理由もなく涙が出てくる
・緊張感が強くなる
・ちょっとしたことに傷つく
・頭痛
・忘れっぽくなる
・倦怠感や疲労感
・眠れない
・やる気が出ない
・集中力が低下する
マタニティブルーはこのように様々な症状が現れますが、マタニティブルーの女性全員にこれらの症状すべてが現れるというわけではありません。この中の2~3個しか症状が現れないということもよくあります。
マタニティブルーの6つの原因
マタニティブルーを引き起こす原因には、6つあります。妊娠中のマタニティブルーと産後のマタニティブルーでは原因が違うこともありますが、1つ1つどんな原因があるのかを見ていきましょう。
ホルモンバランスの変化
マタニティブルーの最大の原因はホルモンバランスの変化です。妊娠すると、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)の分泌が一気に増え、さらにプロゲステロンの分泌も増えます。さらに妊娠中期からはエストロゲンの分泌量がどんどん増えていきます。
そして、出産後はプロゲステロンとエストロゲンの分泌は激減し、母乳を分泌を促すプロラクチンというホルモンの分泌は続きます。
妊娠から出産にかけては、これだけのホルモンバランスの変化が起こるのです。生理前に少しホルモンバランスが乱れるだけでも、イライラするなど情緒不安定になる人もいるのですから、妊娠中や産後にマタニティブルーの症状が現れるのは当然のことと言えるでしょう。
予期せぬ妊娠・出産への不安
予期せぬ妊娠に対するショックや出産への不安も、マタニティブルーを引き起こす原因となります。これは、妊娠中のマタニティブルーの原因ですね。
最近は、「授かり婚」が増えていることからもわかるように、計画的な妊娠ではなく予期せぬ妊娠をするケースが多くなっています。
妊娠は女性の人生を大きく変える一大イベントです。妊娠したことで、学業や仕事に少なからず影響が出ます。休学や退学をしなければいけなかったり、今まで築いてきたキャリアを捨てなくてはいけないこともあるでしょう。
また、授かり婚としてハッピーな結婚をする人もいますが、妊娠したから仕方なく結婚する人もいますし、様々な事情で妊娠したのに結婚に至らなかった人もいるでしょう。
そして、予期せぬ妊娠をすると、心の準備ができていない状況で、突然親になることを宣告されたことになります。
このような状況に対するストレス、ショックから、妊娠初期はマタニティブルーを発症することがあるのです。
妊娠後期になると、出産への不安が現実的に感じられるようになります。どのくらい痛いのだろうか、帝王切開になったらどうしようと出産への恐怖を覚える人もいます。
また、きちんとした親になれるのだろうか、自分に子どもが育てられるのだろうかと出産後への不安を感じることもあります。こういう理由で妊娠後期にマタニティブルーになる人もいるのです。
睡眠不足や疲れ
睡眠不足や疲れもマタニティブルーの原因です。この原因は、出産後に多いものですね。出産の疲れも癒えぬままに、赤ちゃんのお世話に追われて、夜も3時間ごとに授乳しなければならないので、産後は疲れがピークに達し、睡眠不足に陥ります。
育児へのプレッシャー
育児へのプレッシャーもマタニティブルーの原因となります。
「きちんとした母親にならなくちゃ!」と思いつつも、「私なんかに子育てができるのかな?」とか「赤ちゃんの泣いている理由がわからない。母親失格かも」と思い悩んで、育児へのプレッシャーを抱え込むことで、マタニティブルーを発症することがあるのです。
旦那さんとの関係の変化
妊娠・出産を機に旦那さんとの関係に変化が現れることも多いと思います。妊娠中は旦那さんが「親になる」という自覚がなく、妊娠中の辛いことを理解してもらえず、旦那さんにイライラすることもあるでしょう。
また、妊娠中から「妻」ではなく「母親」としてしか見てもらえなかったり、育児に全く協力的な様子が見られないと、旦那さんへの苛立ちや失望を隠せませんし、女として見てもらえないことがショックで、マタニティブルーを発症してしまうのです。
月経前症候群(PMS)の既往
妊娠前に月経前症候群(PMS)があった人は、産後のマタニティブルーを発症しやすいとされています。
月経前に気分が不安定になりやすい病態を月経前症候群(PMS)と言いますが、この疾患の既往がある方はマタニティーブルーのリスクも高いと考えておいた方がよいでしょう。
ホルモンバランスで気分が不安定になるなら、産後だけでなく妊娠中もマタニティブルーを発症しやすいと思います。
マタニティブルーと産後うつの違いは?
産後のマタニティブルーと似たような症状に、産後うつがあります。でも、このマタニティブルーと産後うつは似ているようで違うものです。
マタニティブルーと産後うつの違いをまとめました。
1.産後うつは「病気」だけど、マタニティーブルーは病気ではない
- 2.マタニティーブルーは産後2週間以内に落ち着くが、産後うつはそれ以降に起こる
- 3.マタニティブルーは2週間以内に自然に症状が消えるが、産後うつは2週間以上症状が続く
マタニティーブルーは病気ではありませんし、産後数日で発症し、2週間以内に自然に消失します。
それに対して、産後うつは産後2~3週間以降に発症し、特に産後3~6ヶ月頃に発症することが多くなっています。産後うつの症状は2週間以上続き、病気ですのできちんとした治療をしないと治ることはありません。
マタニティブルーと産後うつは症状は似ていても違うものですが、まれにマタニティブルーが産後うつへと移行することもありますので、注意が必要です。
マタニティブルーの6つの対処法
妊娠中や出産後にマタニティブルーの症状が現れた時の対処法をご紹介します。マタニティブルーの時点で、きちんと対処しておくことが、マタニティブルーから産後うつへの移行を防ぐためには重要なことです。
気持ちの変化を受け入れる
マタニティブルーの対処法の1つ目は、気持ちの変化を受け入れることです。妊娠中や出産後にマタニティブルーの症状が現れるのは、当たり前のことです。それだけホルモンバランスが変化しているのですから。
マタニティブルーの症状が現れても、それは異常なことではなく、当たり前のことなんだと認めて受け入れるようにしましょう。自分を責める必要は全くありません。
今、気分が落ち込んでいるのは、マタニティブルーのせいだと分かっていれば、必要以上に焦ったり、自分を責めずに済むでしょう。
今の気持ちを誰かに話す
妊娠中や出産後に気持ちが落ち込んだら、その気持ちを自分の中に溜めこまずに、周囲のだれかに話すようにしましょう。
今の気持ちを誰かに聞いてもらうだけで、気分が楽になることがあります。聞いてもらう相手は、これから一緒に育児をしていく旦那さんが最も良いのですが、旦那さんが忙しかったり、妊娠・出産に全く理解がないという場合もあると思います。
そういう場合は、自分の母親や出産経験がある友人に聞いてもらうと良いと思います。また入院中は産科の看護師や助産師に話を聞いてもらうのも良いでしょう。
適度な運動をする
適度な運動をすることでも、リフレッシュできて、気持ちが楽になることがあります。妊娠中や産後すぐは、どうしても室内にいることが多く、運動不足になりますよね。
妊娠中や産後でも気軽にできるウォーキングやストレッチ、ヨガなどを行うと、気持ちが前向きになるでしょう。
妊娠中の人はお腹が張ってきたら、すぐに運動を止める必要があります。また、切迫流産や切迫早産と診断されている人は、運動は厳禁です。出産後も体調第一にして、できる範囲での運動にしましょうね。
誰かに手伝ってもらう
出産後のマタニティブルーの対処法で有効なものは、育児を誰かに手伝ってもらうことです。「私が母親なんだから、私が赤ちゃんのお世話は全部やらなくちゃ!」と1人で抱え込んでいませんか?
育児はあなた1人で行うものではありません。夫婦2人で行うものです。また、夫婦2人で行うのが難しいなら、周囲の人に助けを求めて手伝ってもらってください。
旦那さんにマタニティブルーを理解してもらう
育児は夫婦2人で行うものですので、妊娠・出産に関する悩み、育児に関する悩みは、旦那さんに一番の理解者になってもらわなくてはいけません。
でも、実際問題として男性が妊娠・出産を理解するのは難しいので、男女の意識の差がマタニティブルーの原因にもなっているのです。
マタニティブルーを悪化させないためには、旦那さんにマタニティブルーをきちんと理解してもらいましょう。
妊娠中から、産後2週間までは気分が落ち込むことがあるかもしれないけれど、ホルモンバランスの変化のせいだから支えてほしいと何度も伝えておきましょう。
この記事を夫婦で一緒に読むのも旦那さんのマタニティブルーへの理解を深めるのにも役立つと思いますよ。
アロマテラピーでリラックスする
マタニティブルーの症状が現れたら、アロマの力を使って、リラックスするのも良いでしょう。アロマでリラックスすることができれば、マタニティブルーを悪化させずに、回復を早めることができます。
心を明るくさせるジャスミンやローズ、リラックス効果のあるイランイラン、クラリセージ、ラベンダー、カモマイルがオススメです。
できれば、パートナーや家族にマッサージオイルを使って、背中や手をさすってもらいましょう。
マタニティーブルーの症状と原因・対処方法についてのまとめ
・マタニティーブルーは、3~5日で抑うつ症状のピークになる
・マタニティーブルーは、出産後の2周間以内には自然と消える
・マタニティーブルーは、出産した50%の女性に現れる症状
・マタニティーブルーは病気ではない
・マタニティーブルーの症状
「なんとなく気分が落ち込む」「わけもなく不安になる」「忘れっぽくなる」など
・マタニティーブルーの原因
「ホルモンバランスの変化」「予期せぬ妊娠や出産への不安を抱えている」「睡眠不足や疲れ」「育児へのプレッシャー」「旦那との関係の変化」「月経前症候群(PMS)が妊娠前にあった」
・マタニティーブルーの対処法
「異常なことではなく、当たり前のことだと思う」「今の気持ちを誰かに話す」「ウォーキングやストレッチなど適度な運動」「誰かに育児を手伝ってもらう」「旦那にマタニティーブルーを理解してもらう」「アロマテラピーでリラックス」
マタニティブルーの症状や原因、対処法をまとめました。マタニティブルーは妊娠中にも出産後にも起こり得る症状ですが、病気ではなく、妊娠中や産後なら誰にでも起こる可能性があるものなのです。
ただ、マタニティブルーを放っておくと、そのまま産後うつへ移行する可能性がありますので、ご紹介した6つの対処法を実践するようにしましょうね。