妊娠したのは良いけれど、生まれてきた子がダウン症だったらどうしよう?と心配になるパパとママは多いですよね。子どもの障害を心配するのは、親として当たり前のことです。
ダウン症はどんな病気なのか、ダウン症の特徴や原因、検査方法、エコー検査での所見をまとめました。
この記事の目次
ダウン症とはどんな病気?
ダウン症の特徴や原因などを知る前に、まずはダウン症とはどんな病気なのかを説明していきます。
ダウン症とは先天性の染色体異常によって起こる病気です。私たち人間は46本(22対の常染色体と1対の性染色体)の染色体を持っています。
ダウン症は22対の常染色体の21番目の染色体に異常が起こることで発症する病気です。
染色体にはたくさんの遺伝子がありますが、染色体の一つが多いために遺伝情報のアンバランスがおこり、身体発育・知的発達の遅れや種々の合併症を引き起こすものです。
先天性異常、染色体異常というと、遺伝が原因なのではないかと思う人も多いと思いますが、ダウン症のほとんどは遺伝が原因ではなく突然変異が原因です。
ダウン症の種類
ダウン症には3つの種類があります。染色体異常といっても、その種類は1つだけではないのです。
21トリソミー型
これはダウン症の大部分を占めるタイプで、21番目の染色体が、通常は2本なのに対し、3本持っているためにダウン症を発症するものです。
21トリソミー型は両親の染色体数は正常であり、ダウン症の95%はこの21トリソミー型になります。
転座型
これは21番目の染色体の1本がほかの染色体(13番、14番、15番、21番、22番)にくっついているタイプのダウン症になります。
この転座型はダウン症の中で3%しかなく、転座型の半分は両親の染色体は正常ですが、もう半分は両親のどちらかが転座染色体の保因者で遺伝性転座になります。
両親のどちらかが転座染色体の保因者の場合、兄弟共にダウン症だったり、兄弟の中に保因者がいる可能性があります。
モザイク型
このモザイク型は21番染色体の中に正常の染色体の細胞と21トリソミー型の細胞が混在していることで、ダウン症を発症するタイプになります。
このモザイク型は正常な染色体細胞が混ざっているため、他の2つの種類のダウン症と比べると、症状はやや軽めで、両親の染色体は正常ですので、突然変異での発症になります。
モザイク型のダウン症は珍しく、全体の2%程度しかありません。
ダウン症の発生頻度・確率は?
ダウン症以外にも染色体異常の病気はパトウ症候群(13番目の染色体が3本)やエドワーズ症候群(18番目の染色体が3本)、クラインフェルター症候群(男性の性染色体のX染色体が多い)などがありますが、染色体異常の病気の中で、ダウン症が最も発生頻度が高いとされています。
ダウン症の発生頻度は0.1%となっています。1000人に1人の割合で、ダウン症の赤ちゃんが生まれてくるということですね。
日本では、毎年1,300人から1,500人のダウン症の赤ちゃんが生まれていると考えられます。
ダウン症の身体的な特徴
ダウン症の身体的な特徴を説明してきます。
顔や頭の特徴
ダウン症は顔や頭に特徴が現れやすく、顔を見るとダウン症かどうかがわかることが多いんです。
・頭が小さい
・後頭部が扁平(丸い膨らみがなく平ら)
・髪の毛が少ない
・目が吊り上がっている
・パッチリ二重
・蒙古ひだ(上まぶたが目頭を覆う部分にあるひだ)
・鼻が低い
・耳の奇形
・舌が厚い
・舌が口から出ている
具体的な例は画像検索でお探し下さい
ダウン症は染色体のエラーで顔の中心部は成長せずに、外側だけが成長するため、ダウン症児は特徴的な顔つき、似たような顔つきになります。蒙古ひだはエピカントス、内眼角贅皮とも呼ばれるものです。
ダウン症児の耳は小さめで下の方についていたり、折れ曲がっているなどの特徴が見られます。
体つきや手足の特徴
ダウン症は体つきや手足にも特徴が現れます。
・手足が短い
・ずんぐりとした体形
・指が短い
・首が太くて短い
・手の小指の関節が1つしかない
・手の小指が内側に曲がっている
・手のひらに猿線がある
・皮膚は乾燥している
ダウン症は手足が短く、首が太くて短いため、ずんぐりとした体型という特徴があります。また、ダウン症の子どもの半数に猿線といわれる手相が現れます。
猿線とはますかけ線とも言われるもので、感情線と頭脳線が一本になって手のひらを横断しているものです。ただ、猿線があれば必ずダウン症というわけではありません。健常な人でも猿線を持つ人はいます。
ダウン症の発達の特徴
ダウン症は外見に特徴が現れるだけでなく、発達上の特徴も現れます。
運動発達の特徴
ダウン症は筋緊張の低下が特徴です。筋肉の緊張がない(筋肉が収縮しにくい)ため、運動の発達が遅れることが多いんです。
産まれた時の身体は健常な赤ちゃんに比べて、グニャグニャで柔らかいことが多く、首が座る、一人で座る、ハイハイする、歩くなどの運動発達が遅れることが珍しくありません。
ダウン症の子どもは歩き始めが2歳以降になることもあるんです。
ことばの発達の特徴
ダウン症はこど場の発達も遅めです。
単語の始まりは3歳ぐらいになることも普通です。また、コミュニケーションは十分に取れるのに発音がはっきりせず、会話になりにくいといった問題も出ることがあります。
また、知的障害を併発していることも少なくなく、ダウン症はアルツハイマー病を発症しやすいという特徴もあります。
ダウン症の人に限ると、40歳以上の約 25%、60歳以上の約65%に痴呆症の 主たる原因であるアルツハイマー病が みられ、ダウン症の人は他の人たちよ り痴呆症を発病する率が高いと考えら れます。
引用:痴呆症と知的障害
さらに、注意欠陥/多動性障害や自閉スペクトラム障害、学習障害などの発達障害も発症しやすいとされています。
ダウン症の人が合併しやすい合併症
ダウン症の人は、染色体異常による身体の設計図のエラーによって、さまざまな合併症を発症しやすいという特徴があります。
・心室中隔欠損症
・心内膜欠損
・動脈管開存
・鎖肛
・十二指腸狭窄
・白内障
・急性白血病
・一過性骨髄異常増殖症
・環軸関節不安定症
・甲状腺疾患
・近視、遠視、乱視
この中で最も多いのは心臓疾患です。ただ、重度の心疾患を合併していない限り、寿命は健常の人と大きく変わりません。
20年前には、「長生きできない子ども」と考えられていましたが、重い心疾患などがない限り、寿命には問題がないことがわかっています。
ダウン症の原因
ダウン症の原因は染色体異常です。そして、その染色体異常のほとんど、98%以上は突然変異(残りは遺伝性)で起こるものですので、確実に予防できる方法はありません。
ただ、ダウン症の確率を上げるものには、高齢出産があります。
出産年齢 |
ダウン症の確率 |
20歳 |
1/1530 |
25歳 |
1/1350 |
30歳 |
1/900 |
32歳 |
1/660 |
34歳 |
1/450 |
35歳 |
1/360 |
36歳 |
1/280 |
38歳 |
1/170 |
40歳 |
1/100 |
42歳 |
1/55 |
44歳 |
1/30 |
出典:胎児の染色体について クリフム夫律子マタニティクリニック
ママの出産年齢が上がるにつれて、ダウン症の赤ちゃんが生まれる確率は上がっていきます。ただ、ママの年齢が若くても、突然変異等でダウン症の子どもが生まれることはあります。
40歳での出産で100人に1人、44歳での出産で30人に1人の割合を高いと思うかどうかは、人によって違いますが、高齢出産をする場合は、ダウン症の子どもが生まれるリスクがあることはしっかり知っておく必要があるでしょう。
ダウン症の出産前の検査方法
ダウン症かどうかを出産前に検査する方法は5つあります。
エコー検査
ダウン症の検査方法の1つ目は、エコー検査です。妊娠12週ごろに、頸部浮腫(NT)を測る検査を行います。
NT値を測って、頸部浮腫が大きい場合、ダウン症の可能性がありますので、より詳細な検査を勧められることがあります。
ただ、このエコー検査では確実にダウン症かどうかを判別できるわけではなく、見逃してしまうこともあります。
クアトロテスト
クアトロテストは母体血清マーカー検査とも言われる検査法で、ママから採血して、血液内の「αフェトプロテイン」、「ヒト絨毛ゴナドトロピン」、「エストリオール」、「インヒビンA」の4つの成分を組み合わせて評価する検査方法です。
このクアトロテストでは、18トリソミー(エドワーズ症候群)、ダウン症、神経管閉鎖障害の3つのリスクがどのくらいかがわかります。
ただし、この検査で確定的な診断はできません。あくまでもリスク(可能性)を評価するだけですので確率が低いから絶対大丈夫といいきれるわけではありませんし、逆に確率が高く評価されたといって診断が確定したわけでもありません。
羊水検査
羊水検査は妊娠16~18週に行う検査で、お腹に針を刺して羊水を少量採取し、羊水の染色体を調べることで、赤ちゃんに染色体異常がないかどうかを検査する方法です。
羊水検査を行えば、赤ちゃんの染色体を調べることができるため、ダウン症かどうかの確定診断ができます。
ただ、羊水検査はリスクが伴う検査になります。針を刺したことで、羊水が流れ出したり、出血したりすることがありますし、いくらエコーで赤ちゃんの位置を確認しながら針を刺すといっても、赤ちゃんに針が刺さるリスクはゼロではありません。また、感染のリスクもあります。
そして、お腹に針を刺したことで流産する可能性もあるのです。
羊水検査後の流産の可能性は一般に0.5%程度といわれています。
そのため、羊水検査は高齢出産であること、さらにエコー検査やクアトロテストで異常があった場合のみの行うことが多いようです。
絨毛検査
出典:koga-f.jp
絨毛検査はお腹に針を刺して、もしくは経膣から絨毛組織を採取することで、赤ちゃんの染色体異常を調べる検査です。
羊水検査と似ている部分もありますが、羊水検査は安定期に入った16~18週に行うのに対し、絨毛検査は11~14週の初期にできるというメリットがあります。
また、絨毛組織に針を刺しますので、赤ちゃんに針が刺さるというリスクもありません。
ただ、流産しやすいというデメリットはあります。
流産リスクが1%程度とされ、羊水検査の0.3%よりも高くなります。しかし、これは検査が危険と言うことではなくて、妊娠週数が早いほど、流産することが多いため、羊水検査よりも早い週数で実施する、絨毛検査では流産が自然と多くなります。
新型出生診断
出典:yamacomi.com
新型出生診断は、妊娠10週から22週ごろに行われる検査で、ママの血液から赤ちゃんに染色体異常がないかを診断する方法です。
クアトロテストよりも精度が高い、さらに採血のみなので母体や赤ちゃんへの負担がほとんどないというメリットがあります。
.胎児の13,18,21番染色体の数が正常であるか,増加する異常を持っているかどうかを調べます。
ただ、この検査は精度は高いものの、ダウン症かどうかの確定診断はできませんので、新型出生診断でダウン症のリスクありという検査結果が出た場合は、羊水検査をして確定診断をしなければいけません。
また、この検査は現在、臨床研究として行われていますので、検査を受けられる医療機関が限られています。
さらに、検査を受けられる妊婦さんも限られているのです。
・これまでの妊娠・分娩で染色体異常があった
・ママかパパが染色体転座保因者
・エコー検査やクアトロテストで赤ちゃんの染色体異常の可能性高い
・高齢出産
この条件を満たした妊婦さんが、新型出生診断を受けることができます。
ダウン症の出産前のエコー検査の所見
ダウン症かどうかを一番最初に疑うきっかけとなるのは、エコー検査だと思います。ダウン症の赤ちゃんは、エコー検査でどのような所見があるのかを知っておきましょう。
・首のコブ(むくみ)
・手足が短い
・心臓の壁が薄い
・鼻の骨の発育が遅い
・小脳が小さい
ダウン症の赤ちゃんは、エコーでこのような特徴を示します。妊娠11~13週で、首のコブが3mm以上あると、ダウン症の可能性が高いとされています。
ただ、エコー検査では赤ちゃんのすべてが見えるわけではありませんし、必ずこの所見全てが現れるわけではありませんので、エコー検査をしてもダウン症を見逃してしまうことがありますので、高齢出産で心配な場合はクアトロテストを受けたほうが良いでしょう。
ダウン症の特徴や原因、出産前の検査方法についてのまとめ
・ダウン症には、21トリソミー型と転座型、モザイク型の3種類にわけられている
・ダウン症の発症頻度は0.1%(1000人に1人)
・ダウン症の顔と体の特徴
「顔が小さい」「後頭部が平らで目が釣り上がっている「ぱっちり二重」「鼻が低い」「耳が奇形になっていて舌が厚く、舌が口から出ている」「手足が短く、ずんぐり体型」
・ダウン症発達の特徴
「筋肉の緊張が発達しにくいため、運動発達が遅れることがある」「アルツハイマー病」「自閉症」「注意欠陥」「学習障害」などが発症しやすい
・ダウン症の原因は98%以上が突然変異によるもので、予防できる方法はない
・ダウン症の確率を下げるには、高齢出産をしないこと
・ダウン症の出産前の検査方法
「エコー検査」「クアトロテストや羊水検査」「絨毛検査」
ダウン症の特徴や原因、出産前の検査方法、エコー検査での所見をまとめました。ダウン症のほとんどは突然変異でおこるものですから、もしダウン症の赤ちゃんが生まれても、ママは自分を責める必要はありません。
また、ダウン症の発達の遅れは人それぞれで、日常生活に全く支障がなく、健常者と同じように過ごしている人もいます。その赤ちゃんに合った療育・治療を行っていくようにしましょう。
そして、ダウン症の検査方法は5つありますが、それぞれメリットとデメリットがありますので、医師と相談しながらどの検査を受けるべきかを決めると良いでしょう。