妊娠した女性にとって、最もつらいことの1つが流産です。せっかく新しい命を授かったのに、残念ながら流産してしまうこともあります。
流産はどんなに気をつけていてもリスクをゼロにすることはできませんし、妊娠した女性の誰にでも起こりうるものです。
流産の確率や種類、原因、兆候や症状をまとめました。原因や兆候を知っておけば、流産を未然に防ぐことができる場合もありますので、流産についての正しい知識を身につけておきましょう。
流産とは?流産確率ってどのくらい?
流産とは妊娠したにも関わらず、妊娠22週以前にお腹の赤ちゃんが死んでしまうことを言います。22週以降の場合、現代医学を駆使すれば、赤ちゃんは子宮の外で生きていくことができますので、流産ではなく早産に分類されます。
妊娠12週未満での流産を早期流産、12週から22週未満の流産を後期流産と呼んでいますが、早期流産が流産全体の80%を占めています。
流産は決して珍しいものではありません。流産は15~20%の確率で起こるとされています。つまり、妊娠経験のある女性の5~6人に1人は流産する可能性があるということです。
また、流産確率は年齢に比例して高くなります。
流産率は女性の年齢とともに増加し、35歳で約20%、40歳で約40%、42歳で約50%と報告されています。
高齢出産の女性は、流産する可能性が高いのです。
流産の種類
流産には自然流産と人工中絶に分けることができます。人工中絶も妊娠22週以前に赤ちゃんが死んでしまいますので、流産に分類されるのです。
ここでは、自然流産の種類について説明します。
症状による分類
症状による分類では、稽留流産と進行流産の2つに分けられます。
■稽留流産
稽留流産は、自覚症状がないのにお腹の中で赤ちゃんが死んでしまった状態のことです。稽留流産は自覚症状がないために、妊婦健診で初めて流産しているとを知ることがほとんどです。
稽留流産は自然に排出されるのを待つこともありますが、必要に応じて手術で子宮内容物を除去することもあります。
■進行流産
進行流産は流産が始まっていて、子宮内容物が外に出てきている状態です。子宮内容物がすべて外に出てしまった完全流産と、一部は子宮に残っている不完全流産に分けることができます。
流産の時期=化学流産
化学流産は、妊娠検査薬で陽性反応は出たものの、産婦人科でエコーで妊娠が確認できる前に流産してしまうことです。
化学流産は医師によって妊娠確定の診断が出ていませんので、医学的には流産には分類されません。
一昔前は化学流産をしても、妊娠していることに気づいていないので、「原因不明の不正出血がある」とか「生理が少し遅れた」という認識だったのですが、現在は妊娠検査薬が広く普及しているので、エコー前に妊娠を知ることができ、化学流産に気づくことができるようになりました。
化学流産は6週未満、つまり5週6日までに起こると化学流産に分類されます。
流産の回数=習慣流産
流産を3回以上繰り返す場合、習慣流産に分類されます。流産は15~20%に起こるものですので、流産すること自体は珍しくありませんし、病気というわけでもありません。
でも、3回以上繰り返して流産する場合、何らかの病気が原因で流産を繰り返している可能性がありますので、きちんと検査をする必要があります。
流産の原因は?
流産の原因は5つに分類できます。
・染色体異常
・子宮の異常
・感染症
・合併症
・生活習慣
流産をしてしまうと、ママは自分を責めてしまうと思います。でも、妊娠12週未満で起こる早期流産の多くは、胎児の染色体異常が原因で、ママがどんなに気をつけていても防ぐことができないものです。
早期流産(妊娠12週未満)のほとんどが受精卵の染色体異常が原因で流産は止められないものです。こうした例では母体に問題があるわけではありません。
ですから、流産をしてもママは自分を責めないでください。
染色体の異常
流産の60~70%には胎児の染色体異常が認められます。
受精卵の段階で40%に染色体異常があるとされ、それが出生時には0.6%に減少することを考えると、この「自然淘汰」が働かなければ4割の出生児が染色体異常を持って生まれることになります。
そのため、染色体異常による流産は、出生まで成長できないために流産してしまうということですので、流産を止めることはできないのです。
受精卵の染色体に異常が生じる原因は偶発的なこともありますが、母体の高齢化や夫婦の染色体異常などがあります。
子宮の異常
出典:is-lady.com
赤ちゃんが育つ子宮に異常がある場合も、流産を起こすことがあります。先天的な子宮の奇形や子宮筋腫で子宮の形状に異常があると、胎児が子宮内で発育できないので、流産が起こるのです。
また、子宮が小さかったり、黄体機能不全で子宮内膜の厚さが不十分になる子宮発育不全も流産の原因となります。
さらに、頸管無力症の場合、子宮頸管の力が弱く、子宮の入り口が緩んでしまって胎児を支えることができないので、流産してしまうことがあるのです。
感染症
ウイルスや細菌が原因で、流産することもあります。流産を起こす感染症には梅毒や単純ヘルペス、風疹、マイコプラズマ、サイトメガロウイルス、パルボウイルス、クラミジア感染症などがあります。
合併症
バセドウ病や橋本病、糖尿病、膠原病などの病気を持っていると、胎児が発育できずに流産することがありますが、治療で症状をきちんとコントロールできれば、出産できることがほとんどです。
生活習慣
後期流産では、生活習慣が原因で流産してしまうこともあります。
・ストレス
・喫煙
・CT検査などの被曝
・薬
・アルコール
ストレスは流産の原因になるものです。
緊張するとアドレナリンが上昇、それによって毛細血管が萎縮し、血行が悪くなります。妊娠中であれば、胎児への栄養がスムーズに運ばれずに流産の危険が……。また、ストレスでプロラクチンが上昇すると、卵巣機能にブレーキがかかり、妊娠維持に働く黄体ホルモンの分泌が低下します。
引用:きちんと知りたい「不育症」|不育症に関するマスコミ情報|不育治療に関するご相談と情報|青木産婦人科クリニック 不育症・着床障害
また、喫煙者は非喫煙者と比べて流産するリスクが高いですし、放射線の被曝でも流産する可能性があります。さらに、妊娠中に薬を服用したり、アルコールを飲むことでも、流産のリスクは上がります。
逆に考えると、妊娠中はこれらのことに気をつければ、流産のリスクを下げることができるのです。
切迫流産とは何?
流産の中には切迫流産というものがあります。この切迫流産は、まだ流産をしていないけれど、流産の危機が迫っている状態のことです。
一般の流産は基本的に妊娠継続不可能ですが、「切迫流産」は妊娠継続の可能性があります。
切迫流産の段階で気づいて対処できれば、流産に至らずに、元気な赤ちゃんを出産できることもあります。
流産の中にはどうやっても回避できないものも多いですが、切迫流産の段階でで対処すれば流産しないものもあるのです。切迫流産の段階で気づくためには、流産の兆候や症状にいち早く気付く必要があります。
流産の兆候や症状
切迫流産の段階で気づくためには、流産の兆候や症状を知っておかなくてはいけません。
不正出血
流産の兆候の代表的なものが、不正出血です。流産による不正出血は、ごく少量の出血から、生理以上の出血までいろいろです。
ただ、正常な妊娠でも妊娠初期に出血することはよくあることです。
妊娠初期(妊娠8週頃まで)の少量の不正出血は全ての妊婦の約30%に出現するが、出血の有無は流産率に影響しない。
そのため、少量の不正出血があっても慌てることなく、とにかく安静にしましょう。初期の切迫流産は治療薬はなく、安静にすることが一番の薬なのです。
安静にしても出血が止まらないようであれば、かかりつけの産婦人科に相談してみましょう。生理のような出血が産婦人科受診の目安になります。
お腹の張り
流産の兆候や症状の2つ目は、お腹の張りです。何だかお腹が張るという場合は、流産が進んでいる可能性がありますので注意が必要です。
腹痛・腰痛
流産の兆候や症状には、腹痛や腰痛もあります。生理痛のような下腹部痛や腰痛は、流産の兆候です。
妊娠中は流産をしていなくても、下腹部痛や腰痛を感じることもありますが、下腹部痛や腰痛と共に不正出血がある場合は、流産の可能性が高くなります。
基礎体温の低下
流産すると、基礎体温が下がります。この基礎体温の低下は、流産の兆候ではなく、流産後の反応といったほうが良いかもしれません。
妊娠すると、高温期がずっと続き、14週ごろに徐々に下がってきます。ただ、完全流産をして、子宮内容物がすべて外に出てしまうと、ホルモンバランスが妊娠前の状態に戻りますので、基礎体温がストンと低下するのです。
つわりが消える
妊娠すると妊娠5週目頃からつわりが始まりますが、稽留流産すると、つわりが嘘のように消えて、スッキリすることがあります。
ただ、稽留流産をしても、つわりが必ず消えるというわけではなく、流産後もつわりがしばらく続くという人も珍しくありません。
流産の兆候が現れたら?
流産の兆候が現れたら、どうすれば良いでしょうか?
すぐに受診したほうが良い場合
生理の時のような量の出血と強い下腹部痛があれば、すでに流産をしてしまった可能性が高いので、病院を受診したほうが良いでしょう。出血が多い流産の場合は、すぐに子宮内容物除去の手術をする必要があります。
自宅で安静にして様子を見て良い場合
少量の出血や軽度の下腹部痛、お腹の張り、基礎体温の低下、つわりの消失などの流産の兆候が出た場合は、自宅で安静にして様子を見てください。
妊娠12週未満の切迫流産の場合は、流産を止める薬はなく、安静にすることが一番良い治療法なのです。
初期の場合には、先に述べましたように、流産を止める治療法はありませんので、病院に来られても超音波でみるくらいで、処置はありません。
病院を受診するために、歩いたり車に揺られることで、流産が進んでしまうリスクの方が大きいんです。
そして、もしかかりつけの産婦人科が診療時間内だったら、電話で症状を伝えて、いつ受診すべきかを相談してください。もし、夜間や休日など診療時間外だったら、診療が始まる時間まで待ってから、電話で相談してくださいね。
流産の確率と種類、原因や兆候と症状についてのまとめ
・流産の確率は、15~20%で起こるとされている
・流産の種類
「稽留流産」「進行流産」「化学流産」「習慣流産」
・流産の原因
「染色体異常」「子宮の異常」「感染症や合併症」「生活習慣」
・切迫流産とは、流産の危機が迫っている状態
・流産の兆候や症状
「不正出血」「お腹の張り」「腹痛と腰痛」「基礎体温の低下」「つわりが消える
・流産の兆候が現れたら、病院へ
・妊娠12週未満の切迫流産の場合は、自宅で安静にする
流産の確率や種類、原因、兆候や症状をまとめました。流産は染色体異常が原因でママの責任ではないことが多いですし、100人に15~20人は流産してしまうのですから、流産しても自分を責めないようにしてくださいね。
また、流産の兆候にいち早く気付けば、切迫流産の段階で安静にするなどの対処法を取ることができ、流産を避けることができるケースもありますので、妊娠中は自分の体調の変化に注意して過ごしてください。