妊娠初期に出血があると、「流産かな?」、「お腹の中の赤ちゃんは大丈夫かな?」と不安になってしまいますよね。
妊娠初期の出血の原因にはどんなものがあるのか、異常な出血の原因は何か、また出血があった時はどうすべきかの対処法をまとめました。これを読めば、妊娠初期に出血があっても、慌てずに対処できるはずです。
この記事の目次
妊娠初期の出血は珍しいことではない
妊娠初期に出血があると、流産したかなと不安になると思います。でも、妊娠初期の出血は流産とは言えません。もちろん、流産が原因で出血することもありますが、それ以外で出血することがあります。
そして、妊娠初期の出血のすべてが異常な出血というわけではなく、心配ない出血もあります。
また、妊娠初期の出血はそんなに珍しいものと言うわけではないのです。妊娠初期の出血は、正常な妊娠の場合でも25%の人が経験するとされています。
妊娠初期の心配ない出血とはどんな症状の出血かを確認しておきましょう。
以下のような出血に緊急性はありません。
1)おりものにピンク色の出血があった
2)おりものシートに直径数センチくらいまでの赤い出血がみられた
3)茶色っぽい、あるいは黒い出血が続く
ピンクや赤い少量の出血、または茶色や黒っぽい少量の出血が続く場合は、それほど心配はいらないということですね。
妊娠初期の出血の3つの原因と対処法
妊娠初期の出血の原因と対処法を見ていきましょう。まずは、それほど心配がいらない出血の原因と対処法です。
着床出血
妊娠初期の出血の原因の1つ目は、着床出血です。医学用語では月経様出血と呼ばれるものですね。
着床出血は受精卵が子宮内膜に着床した時に起こる出血ですので、ある意味生理的な現象であり、それほど心配はいりません。
■着床出血の症状
・生理予定日1週間前から生理予定日にかけての出血
・ピンクや茶色のおりもの、人によっては生理のような鮮血のことも
・出血期間は2~3日
この着床出血は受精卵が子宮内膜に着床し、子宮内膜に潜り込んで根をはやすことで、子宮内膜が溶け出して出血を起こすものです。
【着床出血の対処法】
着床出血が起こった場合、その時点ではまだ妊娠がわかっていない状態だと思いますので、妊娠を希望していて、生理予定日前に出血があったら、妊娠検査薬を使ってみましょう。
早期妊娠検査薬は生理予定日に、一般の妊娠検査薬は生理予定日の1週間後から使うことができます。
妊娠検査薬を使用して陽性反応が出たら、その出血は着床出血だったということですので、産婦人科を受診して、妊娠を確定させると良いでしょう。
内診の刺激
内診の刺激でも、妊娠初期に出血することがあります。妊娠初期は内診をしたり、経膣エコーで胎嚢や赤ちゃんの状態を観察します。この内診や経膣エコーの刺激で、少量の出血が起こることがあります。
【内診による出血の対処法】
産婦人科を受診した後に少量の出血があった時は、内診の刺激による出血の可能性が高いので
特に心配する必要はありません。
念のため、自宅で安静にして過ごすと良いでしょう。翌日以降も出血が続くようであれば、産婦人科を受診してください。
子宮膣部びらん
妊娠初期の出血の原因には、子宮膣部びらんもあります。子宮膣部びらんは、赤ちゃんや胎盤等に異常があるわけではなく、ママの子宮の入り口の粘膜が赤く変化した病気です。
この子宮膣部びらんは、生理のある女性の60~70%に起こる病気ですので、妊娠前から子宮膣部びらんを持っていることがあるのです。
この子宮膣部びらんは粘膜がただれているわけではなく、赤く変化しただけですので、自覚症状がないこともあるのですが、赤く変化することで出血しやすい状態になっていますので、内診や動き過ぎなどのきっかけで出血が起こることがあります。
【子宮膣部びらんによる出血の対処法】
子宮膣部びらんによる出血は、赤ちゃんに影響があるわけではありませんので、特に心配する必要はありません。
痛みはなく、出血も小量で治療の必要はありません。
妊娠初期の異常な出血の6つの原因と対処法
妊娠初期の異常な出血の原因と対処法をご紹介します。妊娠初期の異常な出血、心配な出血の原因は6つあります。
切迫流産(子宮と胎盤のずれ)
妊娠初期の出血の原因の2つ目は、子宮と胎盤がずれることです。これは、切迫流産を起こす原因の1つになります。
妊娠が成立すると、子宮への血流量が増加して、子宮も胎盤もどんどん大きくなっていきます。
子宮と胎盤はくっついていますよね。ということは、子宮と胎盤が大きくなるスピードがシンクロせずに、どちらか一方だけが急激に大きくなった場合、子宮と胎盤がくっついている部分にずれが生じることになります。
子宮と胎盤の接合部にずれが生じると、出血が起こるのです。この子宮と胎盤がずれてしまうと、茶色~鮮血の出血が起こります。
その量が多ければ、鮮血や血の塊となり、少量であれば出てこないこともあります。また出血は時間が経過すれば茶色に変色するために、色のついたオリモノとして観察されます。
【切迫流産による出血の対処法】
妊娠初期の切迫流産は、安静が基本になりますので、とにかく安静にして過ごしましょう。妊娠初期の切迫流産を止める薬はありません。
流産予防の内服薬に関して妊娠予後を向上するというエビデンスはありません。
しばらく安静にして、それでも出血が止まらない場合は、産婦人科を受診すると良いでしょう。
切迫流産(絨毛膜下血腫)
妊娠初期の異常な出血の2つ目は、絨毛膜下血腫です。この絨毛膜下血腫も切迫流産の原因の1つです。
絨毛膜とは子宮の内部を覆って、赤ちゃんと子宮をつないでいる膜のことです。子宮が大きくなったり、ママが動きすぎることで、絨毛膜の下、つまり絨毛膜と子宮内膜の間に血液が溜まってしまうことがあります。これが、絨毛膜下血腫です。
絨毛膜下血腫は、何らかの刺激で出血が起こることがあります。少量の出血であれば、膣から出血する前に吸収されてしまうのですが、出血量が多いと膣からの出血になります。
この絨毛膜下血腫が原因で、流産に至ることも少なくありません。
【絨毛膜下血腫による出血の対処法】
絨毛膜下血腫からの出血は、ママの動き過ぎが原因の1つですので、安静にしてできるだけ動かないようにすることが大切です。胎盤が完成する4~5ヶ月頃には出血が治まって、日常生活に戻れるようになるでしょう。
もし、出血が続いて、お腹の張りや腹痛などの症状が出てきた場合は、流産が進んでいる可能性がありますので、産婦人科を受診する必要があります。
子宮頸部ポリープ
子宮頸部ポリープも、妊娠初期の異常な出血の原因の1つです。子宮頸部ポリープとは、子宮頸部に良性の腫瘍ができる病気です。
子宮頸部ポリープは良性の腫瘍ですので、命に関わるものではありません。でもポリープの組織は脆くて崩れやすいので、ちょっとの刺激で出血を起こすのです。
【子宮頸部ポリープによる出血の対処法】
子宮頸部ポリープは良性の腫瘍ですので、状態によっては妊娠中に積極的な治療を行う必要はないこともあります。
ただ出血によって細菌感染が起こると流産や早産のリスクが高くなります。
痛みはありませんが出血や細菌感染が生じると流早産の原因となることがあり、切除が必要なことがあります。
ポリープの切除というと、痛みを伴うという心配があるかもしれませんが、子宮頸部は知覚神経がありませんので、ポリープを切除しても痛みはないので安心して下さい。
子宮外妊娠
出典:san-kiso.com
妊娠初期の異常な出血の原因は、子宮外妊娠もあります。子宮外妊娠は卵管に着床する卵管妊娠が多いのですが、卵管妊娠をすると、少量の出血が続くことがあるのです。
また、妊娠7週以降になると、受精卵が大きくなって卵管を破裂させる可能性があります。卵管破裂を起こすと、腹腔内への大量出血や下腹部の激痛、血圧低下などを引き起こします。
子宮頸部に着床する頸部妊娠は子宮動脈からの突然の大出血が起こることもあります。
【子宮外妊娠の対処法】
妊娠5~6週ごろには胎嚢が形成されますが、この胎嚢が子宮内にあるかどうかを経膣エコーで確認することで、子宮外妊娠かどうかを診断することができます。
もし、子宮外妊娠であることが判明したら、卵管破裂をする前に処置をしなければいけません。でも、卵管妊娠の場合、自然に流産をして、特別な処置が必要ないこともありますので、妊娠反応の変化(hCG濃度など)を見ながら、処置をすべきか経過観察をすべきか、医師が判断します。
子宮外妊娠かどうかを判別するためにも、妊娠検査薬で陽性反応が出たら、妊娠5~6週の頃には産婦人科を受診するようにしてください。
流産
妊娠初期の異常な出血の原因、次は流産です。妊娠初期に出血をすると、この流産を心配することが一番多いですよね。
流産は22週未満におなかの赤ちゃんが死んでしまうことで、特に妊娠12週未満の初期流産が多く、妊娠12週未満の流産は流産全体の80%を占めるんです。
妊娠12週未満の流産は、赤ちゃんの染色体異常によるものが多く、「自然淘汰の流産」であり、予防することも止めることもできませんし、ママに責任があるわけでもありません。
妊娠5週未満の化学流産(産婦人科で妊娠確定される前の流産)は、普通の生理と変わらない程度の出血量のことが多いです。
それ以降の流産は、出血量が多く鮮血や血の塊が出てきます。また、下腹部痛も流産の兆候の1つです。
ただ、流産の中には、何の症状もなく流産していたという稽留流産もあるのです。
【流産の対処法】
妊娠5週未満で、出血量が普段の生理と変わらない場合は、化学流産の可能性が高いと思います。化学流産は特に受診の必要はありませんが、妊娠検査薬で陽性が出ていた場合は、念のため産婦人科を受診してください。
もし、激しい腹痛と共に大量の出血があった場合は、今まさに流産が起こっている「進行流産」の可能性があり、子宮内容物を除去する処置が必要になりますので、すぐに病院を受診してください。
胞状奇胎
出典:san-kiso.com
妊娠初期の異常な出血の6つ目の原因は胞状奇胎です。胞状奇胎とは子宮内部を覆っている絨毛にブドウのような粒々がたくさんできてしまい、その粒々が赤ちゃんを吸収してしまう病気です。
我が国においては約500妊娠に1回、300分娩に1回の割合で発生するといわれています。近年の少子化にともなって絶対数は減少傾向に有りますが、一定の割合で発生する病気です。高齢(特に40歳以上)になるとやや発生率が高くなるといわれています。
胎状奇胎は出血が起こる以外に腹痛や吐き気などの症状が出ますが、ほとんど自覚症状が出ない場合もあります。
【胎状奇胎の対処法】
胞状奇胎は出産に至ることはありませんので、早めに子宮内容除去の手術を受けなければいけません。子宮内容物を病理検査して、胞状奇胎という確定診断がついたら、その1週間後に再び子宮内容除去の処置をして、胞状奇胎が完全に除去されているかを確認します。
胞状奇胎を発症すると、きちんとした処置を受けても、10~20%は侵入奇胎(がんの前段階の状態)を発症し、1~2%は悪性の絨毛がんを発症しますので、子宮内容除去の手術を受けた後も、定期的に通院していく必要があります。
妊娠初期の出血は電話で相談を!
妊娠初期の出血と異常な出血の原因、その対処法をご紹介してきましたが、自分ではなかなか何が原因の出血なのかを判断できませんよね。
最初にもご紹介しましたが、ピンク色のおりものや茶色のおりもの、赤い出血でも少量なら緊急性はないと言われても、やはり心配になってしまうものです。
もし、妊娠初期に出血を起こしたら、慌てて産婦人科を受診するのではなく、まずはかかりつけの産婦人科に電話をして、どうすべきなのかを相談しましょう。
その時には、次のことを伝えると、スムーズにアドバイスを貰えると思います。
・妊娠週数
・出血の量(下着に付着する程度、生理の2日目の量など)
・出血の色(鮮血、ピンク、茶褐色)
・いつから出血しているのか
・腹痛やお腹の張りはあるか
・その他の症状はあるか
これらのことを伝えれば、産婦人科から適切なアドバイスを貰えるはずです。
妊娠初期に深夜に出血!どう対処するのが良い?
妊娠初期に出血した場合は、自分ではなかなか何の原因による出血かの見分けがつきませんので、産婦人科に電話して指示を仰ぐべきですが、産婦人科が閉まっている深夜に出血した場合はどうすれば良いのでしょうか?
もし、大量に出血している、耐え難いほどの下腹部痛があるという場合は、卵管破裂や進行流産の可能性がありますので、すぐに産婦人科がある救急外来を受診しましょう。
それ以外の深夜の出血の場合は、自宅で安静にして、翌日にかかりつけの産婦人科を受診してください。なぜなら、救急外来に受診しても、何の処置もできませんし、デメリットが大きいからです。
夜間や休日に救急受診をされても、超音波で見ることができるくらいで、何もしてあげることができません。また症状がある場合は安静が基本であり、そういった場合に車に揺られて長距離の移動を行うことはかえってよくありません。
また、緊急性がないのに救急外来に妊婦さんが行くと、インフルエンザなどの感染症をうつされるリスクがあります。
出血はあるけれど、そこまで大量ではなく、それ以外に緊急性のある症状がないという場合は、不安だとは思いますが、自宅で安静にして過ごし、翌日に産婦人科を受診すると良いでしょう。
妊娠初期の出血原因と対処法についてのまとめ
・妊娠初期の出血の原因は、着床出血の可能性があるので「妊娠検査薬を使う」
・内診の刺激によって少量の出血が起こることもあるので、自宅で安静にする
・子宮膣部びらんだった場合は、特に治療しなくても良い
・妊娠初期の異常な出血の原因と対処法
「切迫流産で安静が基本」「ママの働きすぎが原因のため安静にする」「子宮頸部ポリープだった場合は、状態によっては治療を行う必要はない」「子宮外妊娠だった場合は、妊娠5~6週の頃に婦人科を受診」
・流産の対処方法
「子宮内容物を除去する必要があるので、病院を受診する」「胎状奇胎が原因だった場合は、早めに子宮内容物除去の手術を受ける」「妊娠初期の出血は、電話で相談」「深夜の妊娠初期の出血は、自宅で安静にして翌日に産婦人科を受診」
妊娠初期の出血の原因と対処法をまとめました。妊娠初期の出血は、それほど珍しいものではありませんし、特に心配の必要がないものもあります。ただ、すぐに処置が必要な場合もありますので、自己判断はせずに産婦人科に電話で相談してください。
また、妊娠初期は流産を止めるための薬はありませんし、切迫流産には安静が一番の薬になりますから、出血があったらまずは慌てずに安静にして過ごしましょう。