妊娠検査薬を使って陽性反応が出たら、「妊娠した!やった~!」と大喜びするかもしれませんが、まだ無条件に妊娠を喜ぶことはできません。なぜなら、子宮外妊娠の可能性があるからです。
子宮外妊娠とは何か、子宮外妊娠の症状や原因、治療法をまとめました。妊娠を望んでいる人は、念のため子宮外妊娠の知識を持っておきましょう。
この記事の目次
子宮外妊娠とは?
子宮外妊娠とは、受精卵が子宮腔ではなく別の部分に着床してしまうことです。
通常の妊娠は卵子と精子が受精した後、卵管を通って子宮腔の子宮内膜に着床します。でも、子宮外妊娠は卵管や腹膜等に着床してしまいます。
子宮腔以外の部分は胎児を育てるのに適した部分ではありませんので、下腹部痛や腹腔内出血の原因となります。子宮外妊娠の場合は、もちろん出産することはできません。
子宮外妊娠は全妊娠の0.5~1.5%に発生するもので、予防することはできないものです。ただ、子宮外妊娠は放っておくと、母体の命に関わる症状を引き起こすことがありますので、妊娠を望む人は、子宮外妊娠についての正しい知識を持っておく必要があるのです。
子宮外妊娠の種類
子宮外妊娠は、どこに着床するかによって4種類に分けることができます。
■卵管妊娠
卵管妊娠は、受精卵が子宮腔にたどり着く前に卵管に着床してしまうもので、卵管妊娠は子宮外妊娠の97%を占めるものです。
卵管妊娠は炎症や癒着、奇形などによって卵管が狭くなっていることが原因で、受精卵が卵管を通過できずに着床してしまうんです。
■腹腔妊娠
腹腔内妊娠は、受精卵が腹膜や腸管などに着床する妊娠で、子宮外妊娠の中でも0.5~1%しかない珍しいものです。
大部分は胎児死亡にいたる。まれに生児を得ることがあるが、多くは胎勢(胎児の姿勢)の異常から先天奇形をもつ。
■卵巣妊娠
卵巣妊娠は、卵巣内で着床してしまうものです。
■頸管妊娠
頸管妊娠は子宮頸管に着床してしまうものです。子宮頸管も子宮腔の一部ですが、子宮頸管に着床すると、胎児を育てるための空間を確保できないので、胎児を育てていくことができないのです。
また、子宮頸管には子宮動脈が直接つながっているので、受精卵が着床して妊娠兆候が現れることによって、予期せぬ大量出血が起こることがあります。
子宮外妊娠の初期症状
子宮外妊娠の初期症状は、下腹部痛とピンク色のおりものです。子宮外妊娠は全くの無症状で、子宮外妊娠どころか妊娠していることにすら気づかないこともあります。
ただ、子宮外妊娠では、次のような初期症状が起こることがあります。
下腹部痛
子宮外妊娠は軽度の下腹部痛が現れることがあります。子宮外妊娠をすると、本来なら着床しないような狭い部分に着床するので、受精卵が徐々に大きくなると、卵管や周囲の臓器を圧迫していくので、痛みが生じるようになるのです。
ただ、妊娠4~5週の初期段階では、そこまで受精卵が大きくならないので、強い下腹部痛は起こらずに、軽めの痛みだったり、お腹が張っているような感じのみになります。
少量の不正出血
子宮外妊娠をすると、少量の不正出血が起こりますので、血液がおりものに混じって、ピンク色になったり、赤褐色になることがあります。
これは、子宮外妊娠のために妊娠すると分泌されるhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)の増加率が低かったり、分泌が低下しますので、子宮内膜から出血が起こります。
子宮外妊娠では命の危険も
子宮外妊娠は初期症状で気づかずに、そのまま放っておくと、激しい下腹部痛と共に大量出血を起こすことがあります。
子宮外妊娠の大部分を占める卵管妊娠の場合、受精卵がどんどん大きくなると、卵管を破裂させてしまうのです。
胎嚢の増大とともに卵管壁が破れ、胎芽が直接腹腔内に排出される。破裂部より出血が持続し、高度の腹腔内出血にいたる。
卵管が破裂すると、次のような症状が現れます。
強い下腹部痛
卵管が破裂することで、腹腔内に出血が起こり、強い下腹部痛が現れます。
出血による貧血やショック症状
子宮外妊娠で卵管が破裂すると、腹腔内に出血が起こります。この時の出血量は、放っておくと2000ml以上になりますので、出血に伴った貧血症状が現れます。
さらに、血圧低下や頻脈、顔面蒼白、発汗、意識障害などのショック症状(出血性ショック)が現れ、命の危機に瀕します。
また、頸管妊娠の場合は受精卵が大きくなることで、子宮頸部が拡張して、子宮動脈からの大量出血を引き起こすこともあります。
子宮外妊娠の原因は?
子宮外妊娠の原因は何でしょうか?子宮外妊娠には9つのリスク因子があります。これらのリスク因子が子宮外妊娠の原因となることがあるのです。
年齢
子宮外妊娠の原因の1つ目は、年齢です。子宮外妊娠は妊娠適齢期である20~30代に多いのですが、40代で妊娠すると子宮外妊娠をする割合が高くなります。
40歳以上では発生率が10歳代の3倍以上になる。
経産婦
子宮外妊娠は経産婦に多いとされています。
子宮外妊娠は、初産婦の方に比べて経産婦に多いともいわれています。
特に、前回の出産から5年以上の間隔があいていると、子宮外妊娠のリスクが上がると言われているんです。
骨盤内の炎症性疾患の既往
卵管炎などの骨盤内の炎症性疾患の既往は、卵管が細くなったり癒着することがありますので、子宮外妊娠の原因となります。卵管炎だけではなく、虫垂炎や腹膜炎も子宮外妊娠のリスクを上げます。
最近は、クラミジア感染症に感染する若い女性が増えていて、そのことが原因で子宮外妊娠の発生数が増えているとされています。
腹部手術
卵管形成術や卵管不妊手術などの腹部手術をしていると、卵管の癒着が起こりやすくなるので、子宮外妊娠を起こしやすくなります。
卵管形成術、卵管不妊手術(卵管結紮術)など腹部手術の既往は最も重要なリスク因子となる。
子宮外妊娠の既往
以前に子宮外妊娠を起こしたことがある人の10%は、再び子宮外妊娠を起こすとされています。
子宮内避妊具の使用
子宮内避妊具(IUD)を使用している人も、子宮外妊娠のリスクがあります。「避妊をしているのに、子宮外妊娠をするの?」と疑問に思うかもしれません。
でも、子宮内避妊具は受精を予防するものではなく、子宮内に着床することを予防するものなのです。そのため、受精卵が卵管内に着床してしまう可能性はあるのです。
卵管・卵巣など子宮外での妊娠(異所性妊娠といいます。)を予防することはできません。IUD挿入中の子宮外妊娠・異所性妊娠は数多く経験しています。
子宮内膜症の人
子宮内膜症の人は、卵管に子宮内膜が増殖することがあります。そうすると、卵管が癒着してしまうことがありますので、受精卵が子宮腔にたどり着けずに、子宮外妊娠を起こしやすくなります。
不妊治療
不妊治療も子宮外妊娠のリスク要因の1つになります。
体外受精・胚移植では約5%に子宮外妊娠が発症する。
頻回の人工中絶
人工中絶を頻回に行っていると、子宮外妊娠の中でも頸管妊娠を起こしやすくなります。人工中絶を何度も行っていると、子宮内膜に異常が起こりやすくなりますので、子宮体部に着床できず、子宮頸部に着床してしまうのです。
子宮外妊娠かどうかはいつわかる?
子宮外妊娠かどうかは、いつ頃どうやってわかるのでしょうか?子宮外妊娠かどうかは、産婦人科で経膣エコー検査をすることで分かります。
正常な妊娠の場合は、妊娠5~6週で子宮内に胎嚢を確認できます。子宮内に胎嚢が確認できれば、子宮外妊娠ではなく正常な妊娠と診断されます。
ただ、妊娠5~6週になっても、エコーで子宮内に胎嚢が確認できない場合は、子宮外妊娠が強く疑われます。この時のポイントは、エコーで胎嚢が確認できなくても、確実に子宮外妊娠であると診断できるわけではないことです。
エコーで胎嚢が確認できない場合は、以下のような検査を行います。
・内診=子宮外妊娠だと子宮が大きくならない
・血液検査=子宮外妊娠だとヒト絨毛性ゴナドトロピンの増加率が低い
・腹部所見=子宮外妊娠だと圧痛や腹部膨満などがある
・ダグラス窩穿刺=子宮外妊娠による腹腔内出血の有無を確認する
卵管破裂を起こすのは、受精卵や胎嚢が大きくなる7~8週以降になります。そのため、妊娠検査薬で陽性反応が出たら、妊娠6週目までには一度産婦人科を受診して、エコー検査を行い、子宮外妊娠かどうかをチェックしてもらわないといけないのです。
子宮外妊娠の治療法は?
子宮外妊娠の場合、必ず手術をしなければいけないと思うかもしれませんが、そんなことはありません。もちろん、手術の必要がある場合もありますが、手術の必要がない場合もあります。
卵管流産を起こすことも
卵管流産とは、卵管妊娠をした場合に、自然に流産してしまうことです。
受精卵の付着部(胎盤側)より出血し、卵が剥離し、胎嚢、胎芽は卵管腔から腹腔内へ排出される。
腹腔内へ排出された胎嚢や胎芽は自然に吸収されることが多く、この場合はしばらく不正出血は続くものの、特に手術や処置をする必要はありません。
卵管流産をしたかどうかは、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)の値を見ながら、医師が判断します。
手術療法
子宮外妊娠で卵管流産が見られない場合は、卵管破裂を起こす前に手術をしなくてはいけません。子宮外妊娠での手術は根治療法と保存療法の2つがあります。子宮外妊娠の手術は状態によって、開腹手術か腹腔鏡手術を選択することになります。
【根治療法】
根治療法は子宮外妊娠を起こした卵管をすべて切除します。ただ、卵管を切除してしまうと、それ以降は自然妊娠しにくくなってしまうというデメリットがあります。
【保存療法】
保存療法は手術で卵管を開いて、妊娠組織を取り除く方法です。この保存療法だと、将来の妊娠にもそれほど影響はありませんので、妊娠を希望する女性には適した治療法です。
ただ、絨毛組織が残る可能性があるというデメリットがあります。
外妊存続症と言って絨毛組織が残ってしまうことが5%程度に生じます。
また、子宮外妊娠を再発するリスクもあります。
薬物療法
子宮外妊娠の部位が特定できない場合などは、抗がん剤であるメトトレキサートを使って治療をすることもあります。このメトトレキサートは妊娠組織を消失させる目的で使われます。
ただ、このメトトレキサートの投与は全ての子宮外妊娠に適しているわけではありませんし、保険適用にならないというデメリットがあります。
また、メトトレキサート投与後半年間は妊娠できませんので、高齢で妊娠を希望する女性にはリスクが大きい治療法となります。
頸管妊娠は治療が難しい
子宮頸管に着床する頸管妊娠は、治療が難しい子宮外妊娠です。なぜなら、頸管妊娠は常に大量出血のリスクがあるからです。内診をしただけでも大量出血をする可能性があるのです。
頸管妊娠の治療法は次の3つがあります。
子宮頸管内容除去術
大量出血の危険があり、ごく早期の症例に限られる。子宮単純全摘術
最も安全かつ一般的だが、妊孕性は失われる。化学療法併用療法
メトトレキサートにより絨毛組織の縮小をはかり、子宮頸管内容除去術を行なう。
頸管妊娠をしてしまうと、子宮を全摘することがありますので、次回の妊娠を望めなくなるリスクがあります。
子宮外妊娠の種類と症状・原因とリスク・治療法についてのまとめ
・子宮外妊娠の種類「卵管妊娠」「卵巣妊娠」「頸管妊娠」
・子宮外妊娠の初期症状は、下腹部痛と少量のピンク色の出血
・子宮外妊娠は、そのまま放っておくと卵管を破裂させるので、命の危険がある
・子宮外妊娠の原因は、40代で妊娠すると子宮外妊娠になる割合が高くなる
・子宮外妊娠の治療法は、手術療法と薬物治療の2種類
子宮外妊娠の種類や症状、原因となるリスク、治療法などをまとめました。子宮外妊娠のほとんどが卵管妊娠で、卵管妊娠は必ずしも手術が必要というわけではありません。
ただ、卵管妊娠にしてもそのほかの頸管妊娠などにしても、早期に子宮外妊娠であることを発見して対応する必要があります。
妊娠検査薬で陽性が出たから、もう少し後で産婦人科を受診すれば良いと思っていると、卵管破裂から腹腔内出血を起こして、命の危機に瀕する可能性があります。
妊娠検査薬で陽性が出たら、妊娠5~6週には必ず産婦人科を受診して、経膣エコーで胎嚢を確認するようにしてくださいね。