インターネットをしていないと落ち着かない、インターネットにつながらない環境にいるとソワソワしてしまうという人は、ネット依存症かもしれません。
ネット依存症の定義や症状、対策、治し方をまとめました。ネット依存症の人は急速に増加しています。あなたもネット依存症かもしれませんよ?
ネット依存症の定義とは?
ネット依存症とは、インターネットに精神的に依存していて、日常生活に影響を及ぼすほどインターネットをしてしまうという状態です。
ネット依存症は、まだ医学的に正式な病名として認められているわけではありません。ただ、精神医学界では、ネット依存症に注目が集まっていますので、近い将来、ネット依存症は正式な病名となるかもしれません。
アメリカ精神医学会(APA)が発行している精神疾患の診断基準であるDSM-5には、ネット依存症という病名はありませんが、「今後の研究のための病態」という項目に「インターネットゲーム障害」という病名が新たに設けられています。
ネット依存症は正式な病名ではありませんので、まだ明確な定義づけはされていませんが、心理学者のキンバリー・ヤング氏は次のように定義しています。
「インターネットに過度に没入してしまうあまり、コンピューターや携帯が使用できないと何らかの情緒的苛立ちを感じること、また実生活における人間関係を煩わしく感じたり、通常の対人関係や日常生活の心身状態に弊害が生じているにも関わらず、インターネットに精神的に嗜癖してしまう状態」
もう1つ、ネット依存症の定義をご紹介します。中国のネット依存症(ネット中毒)の診断基準です。
仕事や勉強以外で、毎日平均6時間以上ネットをする状態
引用:マンガで分かる心療内科・精神科in渋谷 第59回「『ネット依存症』か分かる、10の質問」 | 渋谷/心療内科/ゆうメンタルクリニック 渋谷駅0分 渋谷駅・精神科・東京・カウンセリング
つまり、ネット障害は仕事や勉強以外で長時間インターネットをしてしまい、それができないと精神的に不安定になる。また、インターネットをすることで、日常生活の対人関係や心身の異常が起こる状態と言えるでしょう。
「ネット依存症」というと、特別な病気というイメージがあるかもしれませんが、ネット依存症の患者数はとても多いんです。
我々が2008年に実施した、成人人口から層化2段無作為抽出方法によって抽出した男女7500名を対象とした調査から、わが国成人のネット嗜癖傾向者は合計270万人におよぶと推計されました。
270万人というと、人口の約2%です。ということは50人に1人はネット依存症になるのです。しかも、この調査は2008年に行われたものです。
現在は2008年当時よりもスマホやタブレットなどの普及で、インターネットをする人口が増えています。また、この調査は成人対象の調査ですので、20歳以下にまで調査対象を広げれば、さらにネット依存症の患者数は増えるでしょう。
ネット依存症の症状
ネット依存症になると、次のような症状が現れます。
- ・気が付くと「え?もうこんな時間?」と思うほどインターネットをしていたことがある
- ・「そろそろ止めなくちゃ」と思っても、ズルズルとインターネットをしてしまう
- ・家族や友人との予定よりもインターネットを優先することがある
- ・やるべきことよりもインターネットを優先する
- ・インターネットのせいで、出社拒否や不登校など仕事や勉強に支障が出ている。
- ・インターネット上で新しい友人を作ることがある
- ・インターネットをしていると落ち着く。ストレスを忘れられる
- ・インターネットをしている時に邪魔をされるとイライラする
- ・インターネットがない世界はつまらない、生きている意味がないと考える
- ・気が付くとインターネットのことを考えている
- 参考:久里浜医療センター|インターネット依存自己評価スケール
- 参考:マンガで分かる心療内科・精神科in渋谷 第59回「『ネット依存症』か分かる、10の質問」 | 渋谷/心療内科/ゆうメンタルクリニック 渋谷駅0分 渋谷駅・精神科・東京・カウンセリング
ネット依存症はこのような症状が出てくるのです。インターネットに依存するあまり、仕事や勉強がおろそかになってしまいます。
また、家族や友人との予定よりもインターネットを優先してしまうので、対人関係に影響が出ます。ネット依存症が重症化すると、仕事を失ったり、退学になり、さらには友人がいなくなって、家族には見捨てられるようになるのです。
ネット依存症による心身の症状
ネット依存症になると、身体的な症状や精神的な症状も出てきます。ネット依存症の人の心身の症状を見ていきましょう。
身体的な症状
ネット依存症の身体的な症状は次のようなものです。
・眼精疲労
・頭痛
・肩こり
・運動不足による肥満
・睡眠不足
・倦怠感
ネット依存症は、常に座った状態でパソコンやスマホの画面を見つめていますので、眼精疲労や眼精疲労からくる頭痛や肩こり、運動不足からの肥満などの症状が現れます。
肥満になると、生活習慣病になるリスクが高まります。高血圧や糖尿病、脂質異常症(高脂血症)、動脈硬化になれば、心筋梗塞や脳卒中を発症する可能性がありますので、ネット依存症はそのまま放置すると命に関わる病気になることもあるのです。
精神的な症状
ネット依存症は精神的な症状も引き起こします。
・うつ病などの心身症
・すぐにイライラするなど情緒不安定
・思考能力がなくなる
・攻撃的になる
・人間不信になる
・相手の表情を読み取れなくなる
・自分の感情を表現できなくなる
・現実社会とのかかわりが面倒になる
ネット依存症になると、このような精神症状が現れます。インターネット上での人付き合いは、直接人と会うわけではありませんので、「嫌になれば、すぐに断絶できる」関係になります。
そのため、インターネット上での付き合いをストレスがなく心地よく感じるため、現実社会とのかかわりが面倒になるのです。
ただ、現実社会とのかかわりが希薄になると、うつ病や情緒不安定などの症状が現れやすくなりますし、現実で人と向き合わないことで、相手の表情を読み取ることが苦手になってしまうこともあるのです。
ネット依存症の対策や治し方
ネット依存症の対策や治し方をご紹介します。
ネット依存症で失うものを書きだしてみる
ネット依存症の対策の1つ目は、ネット依存症になったことで失うもの、失ったものを書きだして、ランク付けするようにしましょう。
インターネットに依存することで、何を失ったでしょうか。友人たちが離れていった、テストの点数が下がった、成績が落ちた、仕事で何回も遅刻をした、重要な仕事を任せてもらえなくなったなど、ネット依存症になったことでの弊害を書きだすのです。
そして、それをランク付けすることで、自分にとってどれだけ大切なものを失ったのか、インターネットをし過ぎたことで、どんなマイナスのことがあったのか客観的に知ることができるようになります。
インターネットをしている時間を測ってみる
インターネットをしている時間を測って、記録しましょう。1日は24時間です。24時間のうち、どれだけの時間をインターネットに費やしているのか、細かく記録すると自分がどれだけインターネットをしているのかがわかります。
ネット依存症の人は、「気づいたら、こんな時間までインターネットをしていた」という人が多いので、自分がどのくらいインターネットに時間を費やしているのかを正確に把握していないのです。
インターネットをしている時間を目の当たりにすれば、インターネットを控えよう、ネット依存症を克服しようと思えるようになるはずです。
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インターネット以外の時間の過ごし方を見つける
インターネット以外の時間の過ごし方を見つけることも、ネット依存症の対策には有効です。なんとなく暇だからインターネットをしてしまう。
特に目的もないけれど、インターネットをしてしまうという人は、インターネット以外の時間の過ごし方を見つけましょう。そうすれば、インターネットから離れることができます。
1日の計画表を細かく作る
1日の行動計画を細かく立てることも、ネット依存症の対策におすすめです。起床時から就寝時まで分刻みで「あれ?暇だな」とか「やることがないな」と思える時間がないように、行動計画を立てましょう。
それに沿って行動していれば、インターネットにのめりこむような時間が少なくなりますので、少しずつネット依存症を克服していくことができるはずです。
医療機関での治療
ネット依存症を克服するための4つの対策を実践しても、全くネット依存症を克服できないというほど重症になっている場合は、専門的な医療機関で治療を受けると良いでしょう。
ネット依存症は精神疾患の「依存症」の1つですので、重症の場合は、自分の努力では治すことができないのです。
ネット依存症を専門に治療している医療機関で治療を受けるのが良いのですが、依存症の治療を専門に行っている医療機関はあまり多くありませんので、まずは近所の精神科を受診して、必要があれば、専門の医療機関を紹介してもらうと良いでしょう。
医療機関での治療法には、認知行動療法や個別や集団での精神療法があります。また、ネット依存症を克服するためには、家族の協力が必要ですので、家族療法も行われることがあります。
ネット依存症の家族の対応は?
ネット依存症を克服するには、家族の協力が必要です。ネット依存症の患者さんへの家族の対応方法をご紹介します。
- 1.取引しない、駆け引きしない
- 2.一貫した態度で接する
- 3.一喜一憂をしない
- 4.一人で判断しない
- 5.インターネットについての学習を続ける
- 6.「私は~」で始まるメッセージで話す
- 7.仲間を作る(家族会)
- 8.家族で同じ対応を目指す
- 参考:久里浜医療センター|ネット依存治療部門 ネット依存家族会
ネット依存症の患者さんの家族は、この8つの接し方を参考にして、ネット依存症を克服できるようにサポートしていきましょう。
ネット依存症の定義と症状・対策や治し方についてのまとめ
「インターネットをすることで日常生活や人間関係に異常を与えてしまうこと」
・ネット依存症の症状
「時間を忘れてインターネットをする」「そろそろ止めないとと思っていてもインターネットをしてしまう」「眼精疲労や頭痛」「肩こり」「運動不足による肥満」「睡眠不足」「うつ病」「すぐにイライラしてしまう」「思考能力がなくなる」「人間不信」
・ネット依存症の対策と方法
「ネット依存症で失った物を書き出す」「インターネットをしている時間を測ってみる」「インターネット以外の時間の過ごし方をみつける」「1日の計画表を細かく作る」「重度のネット依存症の場合は、医療機関で治療する」
・家族が取る対応
「取引しない」「駆け引きしない」「一人で判断しない」「仲間を作る」「ネット依存家族会を作る」「私は~で始まるメッセージで話す」
ネット依存症の定義と症状、対策や治し方をまとめました。ネット依存症は、急速なインターネットの普及によって、どんどん患者数が増えている病気です。
特に、若年層に多く、ネット依存症が原因で不登校や引きこもりになることもありますし、仕事をクビになってニートになることもありますので、早めに適切な対処をするようにしましょう。