日本人は塩分を摂り過ぎていると言われています。日ごろから、減塩に気を遣っている人も多いのではないでしょうか?
でも、逆に塩分が不足しすぎると、体に悪影響が出てくるんです。塩分不足で起こる症状や塩分不足になる原因や病気をまとめました。
塩分不足で陥る5つの症状
塩分過多になると、むくんだり、高血圧になったりします。塩分の過剰摂取は健康に悪いので、塩分を摂り過ぎないように、日々減塩に励んでいる人は多いと思います。
でも、あまりに塩分が不足すると、それはそれで健康に悪いのです。塩分不足になると、どのような症状が現れるのかを確認していきましょう。
めまいやふらつき
塩分不足になることで起こる症状の1つ目は、めまいやふらつきです。
体の中のナトリウム濃度が下がると、ナトリウム濃度を調整するために、脳は体の中の水を尿として排泄します。体の水分を少なくすることで、ナトリウム濃度を上昇させようとするんですね。
体の中の水分が少なくなるということは、血液の量も少なくなるということです。血液の量が少なくなれば、血圧が低下します。
血圧が低くなると、めまいやふらつきなどの症状が現れます。塩分不足になると、低血圧になるんですね。
口渇感や頭痛などの脱水症状
塩分不足になると、口渇感や頭痛などの脱水症状が現れます。先ほども説明しましたが、塩分不足になって、体の中のナトリウム濃度が下がると、体内の水分が少なくなりますので、脱水状態になるんです。
脱水になれば、口渇感や頭痛、吐き気、しびれ、脱力感などの症状が現れるようになります。
食欲不振
塩分不足になると、食欲不振の症状が現れます。塩分不足になると、体内の水分が不足しますよね。水分が不足すると、血液が不足するだけではなく、消化液も不足します。
消化液の分泌が少なくなれば、当然のことですが、食べ物を食べてもうまく消化できなくなります。また、消化管の細胞がカラカラに乾くと、細胞の機能が低下して、消化管の動きが悪くなったり、うまく働かなくなります。
そうすると、食欲がなくなったり、胃もたれや胸やけ、悪心などの症状が現れるようなるんです。
筋肉異常やけいれん
塩分不足になると、筋肉異常やけいれんなどの症状が起こりやすくなります。ナトリウムは筋肉を収縮させる働きがあります。
脳が「筋肉を動かせ!」という指令を出すと、その指令は神経を通って筋肉に伝わります。そうすると、筋肉細胞の外側にあるナトリウムが筋肉細胞の中へと移動します。このナトリウムの移動の結果、筋肉が収縮して、筋肉を動かすことができるのです。
筋肉を動かすのに必要なナトリウムが不足すると、どうなるでしょうか?そうです。筋肉がきちんと動かなくなるのです。
塩分不足になると、ちょっとした拍子に脚がつってしまうこともありますし、筋肉が思うように動かない、けいれんが起こりやすいなどの症状が現れるのです。
精神異常や意識障害
塩分不足になると、精神異常や意識障害の症状も現れます。ナトリウムが不足すると、神経症状が現れるようになるため、パーソナリティの変化や錯乱、傾眠などの症状が現れ、さらに症状が進行すると、意識障害が起こって、昏睡状態になってしまします。
塩分不足が急速に進み、重篤な低ナトリウム血症になると、死に至ることもあるのです。塩分不足は死に至ることもあるんですね。
塩分不足になる5つの原因や病気
塩分不足になると、様々な症状が現れることがわかりました。塩分不足は、最悪の場合、死に至ることもあるんです。ちょっと驚きですよね。
でも、普通に1日3食食べていれば、塩分不足になることは心配しなくても良いでしょう。厚生労働省の調査によると、私たち日本人の1日平均の塩分摂取量は次のようになっています。
・女性=9.6g
厚生労働省が定める1日の塩分摂取量の目標値とWHO(世界保健機関)が定める1日の塩分摂取量の目標値を見てきましょう。
・厚生労働省:女性=7g未満
・WHO(世界保健機関)=5g未満
どうでしょうか?厚生労働省やWHOの目標値と比べると、現在の日本人は塩分を摂り過ぎているんです。WHOは1日5g未満にすると健康に良いとしているのですから、今摂取している塩分量から半分にしても、何の問題もない、むしろ健康に良いというわけなんです。
ですから、普段から健康で、好き嫌いせずに1日3食しっかり食べている人は、塩分不足になる心配はあまりありません。
健康な人が1日3食食べている場合は、むしろ減塩するように注意したほうが良いくらいです。
でも、いろいろな原因や病気で塩分不足になって、低ナトリウム血症(体内でナトリウムが不足している状態)を発症し、先ほどご紹介したような症状が現れるようになります。
塩分不足になる原因や病気を5つに分類してご紹介します、
水分が過剰になって塩分不足になった場合
塩分不足の原因の1つ目は、水分が過剰になって塩分不足になった場合です。これは、厳密に言うと、塩分が不足したのではありません。体内の水分が多くなったことで、体内のナトリウム濃度が低くなったため、塩分不足になったように見えるんです。
水分が多くなったために、相対的に塩分不足になったんですね。水分が過剰になって、塩分不足になる病気には、次のようなものがあります。
・腎不全
・肝硬変
・水中毒
心不全や腎不全、肝硬変は病気によって体内に水がどんどん溜まっていってしまうので、相対的に塩分不足になります。
また、水中毒は精神疾患の患者さんに多い状態です。水をとにかくどんどん飲んでしまうので、体内の水が多くなりすぎて、ナトリウム濃度が低下してしまうのです。
ただ、水中毒になるのは精神疾患がある場合だけではありません。健康な人も水中毒になる可能性があります。
たとえば、熱中症になりかけた時です。汗をかいて、ナトリウムを喪失しているところに、「脱水を予防しなければ!」と必死になって、一気に水を飲んでしまうと、水中毒になって、低ナトリウム血症になる可能性があります。
また、激しい運動をした後も要注意ですね。激しい運動をした後は、体の水分が失われています。そして、水分補給をしますよね。この時に、一気に水を飲んでしまうと、体内のナトリウムの濃度が低下しますので、水中毒になることがあるんです。
腎臓からナトリウムが失われた場合
塩分不足になる原因や病気には、腎臓からナトリウムが失われた場合もあります。ナトリウムは、普通は尿と一緒に体外へ排出されます。
ただ、健康な場合は尿と一緒にどんどんナトリウムが排泄されるわけではありません。
腎臓でろ過・吸収をすることで、体内のナトリウム濃度が高い時には、ナトリウムをドンドン排泄し、ナトリウム濃度が低い時には、ナトリウムを体内にとどめておき、尿中にはナトリウムを排泄しないように調節しています。
ただ、病気になると、このバランスが崩れてしまって、ナトリウムの濃度が低くなっているにもかかわらず、腎臓でうまく調節できずに、ナトリウムがどんどん排泄されるようになって、低ナトリウム血症になり、体内が塩分不足になることがあるのです。
・手術後
・アルコール中毒
・甲状腺機能低下症
・アジソン病
・下垂体の機能低下
・糖質コルチコイド欠乏
・低アルドステロン症
・尿崩症
・薬剤の影響によるもの
これらの病気になると、尿がどんどん出てしまったり、ナトリウムの調節ができなくなるので、尿と一緒にナトリウムが排泄されて、塩分不足になってしまうんですね。
偏食による塩分不足
塩分不足の原因の3つ目は、偏食による塩分不足です。先ほども説明しましたが、普通の食事を摂っていれば、塩分過多になることはあれど、いろいろな症状が出て「低ナトリウム血症」と診断されるほど、塩分不足になることはまずありません。
ただ「普通の食事を摂っていれば」の話です。普通に食事を摂っていなかったら、塩分不足になることもあります。
例えば、異常なほど偏食だった場合です。塩分(ナトリウム)を一切使っていないようなものばかり、チョコレートやケーキなどを主食にして、塩分を一切取らないような食生活を送っていたら、さすがに塩分不足になってしまいます。
また、過度のダイエットをしている人も要注意です。「塩分を濃いめにすると、米をたくさん食べたくなるから、塩分はできるだけ控えめに!」というような食生活、さらに食べる量も極端に節制していれば、さすがに塩分不足になってしまいます。
嘔吐や下痢による塩分不足
下痢や嘔吐をしている場合も、塩分不足になりやすいので注意が必要です。下痢や嘔吐をしていると、吸収されるべきナトリウムが嘔吐や下痢と一緒に体外に出てしまいますので、塩分不足になって、低カルシウム血症になりやすいのです。
特に、下痢をするとナトリウムが喪失しやすく、低ナトリウム血症になりやすいので注意してください。
また、広範囲の火傷も塩分不足で低ナトリウム血症になりやすい原因の1つです。火傷をすると、傷の表面から体液がどんどん流れだしてしまいます。体液の中にはナトリウムがたっぷり含まれていますので、広範囲の火傷は塩分不足を引き起こす原因になる病気なのです。
高血糖
高血糖も塩分不足の原因になります。高血糖になると、浸透圧の関係で、血管内に水をどんどん引き入れるようになります。
そうすると、血管内の水がたっぷりになりますので、相対的にナトリウムの濃度が下がってしまうのです。高血糖のほかに、同じような理由で塩分不足になる原因には、マンニトールなどの浸透圧利尿薬を使った場合やカリウム不足による細胞内の浸透圧低下などがあります。
塩分不足についてのまとめ
・塩分不足の症状
「めまいやふらつき」「口渇感や頭痛などの脱水症状」「食欲不振」「筋肉異常やけいれん」「精神異常・意識障害」
・塩分不足の原因
「水分が過剰で塩分不足な時」「腎臓からナトリウムが失われた場合」「偏食による塩分不足」「嘔吐や下痢による塩分不足」「高血糖」
塩分不足の症状や塩分不足になる原因や病気をまとめました。健康できちんと食事を摂っている人は、塩分不足になる可能性はとても低いのですが、病気や様々な原因で塩分不足になる可能性があります。
塩分不足になると、いろいろな症状が出てきますし、最悪の場合は死に至ることもありますので、塩分過多だけでなく塩分不足にも気を付けるようにしましょう。