高血圧は日本人の国民病とも言われていて、厚生労働省の調査によると日本には1,010万800人もの高血圧患者がいるとされています。日本人の12~13人に1人は高血圧なのです。
高血圧を放っておくと、深刻な病気を招いてしまいます。高血圧の数値や症状、原因、対策についてまとめましたので、高血圧の正しい知識を持って、高血圧の予防・改善をしていきましょう!
高血圧の仕組とは?
高血圧の症状や原因、対策などを知る前に、まずは高血圧の仕組を知っておく必要があります。高血圧とは一体どのような状態なのでしょう?
血圧の計算式は、「1回の心拍出量×末梢血管抵抗」です。少し難しいかもしれませんね。
心臓から送り出される血液の量が多くなれば、血圧は上がります。また、血管壁へ与える圧力が高くなることでも血圧は上がるのです。
高血圧の数値はどのくらい?
高血圧の数値はどのくらいなのでしょうか?血圧はmmHgという単位で表されますが、WHO(世界保健機関)や日本高血圧学会では、収縮期血圧(上の血圧)が140mmHg以上、または拡張期血圧(下の血圧)が90mmHg以上だと高血圧と定義づけています。
出典:seisei.or.jp
収縮期血圧(上の血圧)が140mmHg以上、または拡張期血圧(下の血圧)が90mmHg以上だと高血圧なのですから、血圧が142/82でも高血圧ですし、130/92でも高血圧ということになります。
高血圧の症状は?
高血圧になると、どのような症状が現れるのでしょうか?「高血圧の症状は頭痛じゃないの?」と思っているかもしれませんが、実はその知識は間違いなのです。
高血圧はサイレントキラー
高血圧の自覚症状はほとんどありません。高血圧はこれといった明らかな症状はないのです。そして、自覚症状がないままに静かに高血圧は進行していき、命を落とす病気を引き起こす原因となります。そのため、高血圧はサイレントキラー(静かなる殺人者)と呼ばれています。
ただ、高血圧の自覚症状はまったくないというわけではありません。気をつけていれば、高血圧のわずかな兆候に気づくこともあるのです。
高血圧の症状は以下のものになります。
・肩こり
・胸痛
・動悸
・むくみ
・呼吸困難感
・頭痛
・耳鳴り
・めまい
・手足のしびれ
ただこれらの症状は高血圧の患者さん全員に現れるわけではありませんし、もし症状が現れたとしても、高血圧の初期段階ではなく、かなり進行した状態となります。
また、これらの症状は高血圧からの直接的な自覚症状というよりも、高血圧の合併症の疾患による症状になります。高血圧の合併症にはどんなものがあるかは、次に説明しますね。
高血圧を放っておくと命に関わる
高血圧は自覚症状がほとんどありませんが、気づかずに放っておくと、どんどん進行し、合併症を引き起こします。
高血圧による合併症は以下の4つがあります。
・心筋梗塞や狭心症
・不整脈
・心不全
・脳卒中
高血圧は心臓と血管壁に負担をかけ続けることになりますので、心疾患を合併しやすいのです。心筋梗塞や狭心症の前駆症状として肩こりや胸痛がありますし、不整脈や心不全になれば、動悸やむくみ、呼吸困難感が現れます。
また、血管壁に負担をかけると血管壁が肥厚して動脈硬化を引き起こしますので、これによっても心筋梗塞や狭心症を引き起こしますし、脳梗塞や脳出血を引き起こすこともあります。脳卒中の前兆として、頭痛や耳鳴り、めまい、手足のしびれが起こるのです。
高血圧の原因は?
高血圧の原因というと、塩分の取りすぎが思い浮かぶかもしれません。でも、塩分の取りすぎ以外にもたくさんの高血圧の原因があるのです。高血圧はその原因によって、一次性高血圧(本態性高血圧)と二次性高血圧の2つに分けることができます。
一次性高血圧(本態性高血圧)
一次性高血圧とは、高血圧の原因となる明らかな疾患がない高血圧です。この一次性高血圧は、本態性高血圧と呼んでいます。
一次性高血圧は、遺伝や生活習慣が原因と言われています。高血圧になる生活習慣には次のようなものがあります。あなたは思い当たるものがあるでしょうか?
・塩分の取りすぎ
・過度のストレス
・睡眠不足
・タバコ
・運動不足
・高カロリーの食事
・飲酒
塩分を取りすぎて、体内のナトリウム濃度が上がると、脳は体内に水を溜めこむことでナトリウム濃度を下げようとします。そのため、塩分を取りすぎると、水を溜めこむことで血液量が増加しますので、高血圧になってしまいます。
過度のストレスや睡眠不足になると、交感神経が優位になります。交感神経が優位になると、心拍数が上がり、血管が収縮しますので、血圧が上がるのです。タバコを吸うことでも、交感神経が優位になりますので、タバコも高血圧の原因になります。
運動不足や高カロリーの食事は、肥満を招き、動脈硬化を促進させます。動脈硬化が進めば、血管は柔軟性を失い、血管壁への圧が高くなりますので、高血圧になるのです。
そして、飲酒についてです。
アルコールは血圧を一時的に下げることもありますが、長い間、飲み続けると、血圧を上げ、高血圧症の原因になると考えられています。多くの研究で、日々の飲酒量が多いほど血圧の平均値が上がって、高血圧症になるリスクも高まることがはっきりしてきました。
一次性高血圧はこれらの様々な生活習慣が原因となっているのです。
二次性高血圧
二次性高血圧とは、高血圧の原因となる病気がハッキリとしている高血圧のタイプです。
また、妊娠による妊娠高血圧症候群も二次性高血圧に分類されます。二次性高血圧は原因がはっきりとしていますので、原因疾患を治療すれば、高血圧も改善します。
今すぐできる高血圧の11個の対策
高血圧にならないために、そして高血圧を改善するために、今すぐできる高血圧対策を11個ご紹介します。
規則正しい生活を
高血圧対策の1つ目は、規則正しい生活をすることです。不規則な生活をしていると、自律神経のバランスが乱れて、交感神経が優位になり、血圧が高くなってしまうのです。
そのため、早寝早起きの規則正しい生活をして、自律神経のバランスを整えることが、血圧を正常に保つことにつながるのです。
塩分は控えめにして
塩分を控えめにすることも、高血圧対策には重要です。先ほども説明しましたが、ナトリウムは体に水を溜めこむ性質があります。塩辛いものを食べた翌日は、顔がむくんでいることがありますね。
あれは、ナトリウムによって体内の水分が多くなっているからなんです。体内の水分が多くなると、血管内の水分、つまり血液量も多くなりますので、高血圧になるのです。
食事の味付けは薄めにしても、スパイスやレモン、酢、出汁などを上手に使うと、塩分控えめでも、満足できる食事になるはずです。
また、しょうゆやソースは「かける」よりも「つける」方が塩分摂取量を控えめにできますので、ドバっとかけるのではなく、チョンチョンとつけて食べるようにしましょう。
ストレスは溜めこまずにこまめに発散!
あなたはストレスを溜めていませんか?ストレスを溜めこむと、体がストレスに対抗しようとして、交感神経を優位にさせてアドレナリンの分泌を促します。
交感神経が優位になると、心拍数が上がり、血管が収縮して血圧が上がりますので、高血圧になります。そのため、ストレスは溜めこまずにこまめに発散しましょう。自分なりのストレス発散方法を見つけておくと良いですよ!
禁煙を!
タバコを吸っている人は、これを機会に禁煙しましょう。タバコは交感神経を刺激するものですので、喫煙は高血圧になることを手助けしているようなものです。
何度も禁煙に失敗しているという人は、禁煙外来を受診してみてはいかがでしょうか?禁煙外来でも、保険が適用になることがありますし、専門医の治療・アドバイスを受ければ、禁煙に成功する確率が大幅にアップするはずです。
9ヶ月間禁煙治療を続ければ、約半数の人が禁煙に成功しているのです。禁煙は高血圧だけではなく、がん予防にもなりますので、ぜひこの機会に禁煙にチャレンジしてみましょう。
良質な睡眠を取る
良質な睡眠を取ることも、高血圧対策になります。寝ている時は副交感神経が優位になり、血圧が低下しますので、高血圧を予防・改善できるのです。
良質な睡眠を取るためには、ただ長時間寝れば良いというわけではありません。しっかりと熟睡する必要があります。眠りが浅ければ、副交感神経は優位になってくれません。
ですから、寝具や寝室の室温、その他眠る時の環境にこだわって、良質な睡眠を取るようにしましょう。
適度な運動で肥満を解消
適度な運動をして肥満を解消することも、高血圧対策には大切なことです。肥満は動脈硬化を促進して高血圧を加速させる要因です。
そのため、適度な運動をして、肥満を解消し、血圧を正常に保つようにしましょう。肥満を解消するための運動は、ウォーキングやジョギング、サイクリング等の有酸素運動がおすすめですよ。
ミネラルを積極的に摂る
高血圧対策のためには、ミネラルを積極的に摂りましょう。血圧を調節するミネラルは、カリウムとマグネシウム、カルシウムです。
カリウムには、腎臓から余分な塩分(ナトリウム)を排出する働きがあります。マグネシウムは、その働きを助けます。
カリウムは野菜や果物、海藻類、豆類などに多く含まれています。中でも野菜類や海藻類はカロリーが低く、メタボリックシンドロームの人にもいいので、しっかり食べることが大切です。また、マグネシウムは、海藻やナッツ類、豆類などに含まれています。
カルシウムが不足すると、副甲状腺ホルモンやプロビタミンDが分泌され、これが心臓や血管を収縮させて血圧が上昇します。
カルシウムは乳製品や小魚などに多く含まれています。高血圧を予防・改善するために、カリウムとマグネシウム、カルシウムをしっかり取るようにしましょう。
ポリフェノールを摂る
ポリフェノールには血圧を下げる効果があります。株式会社明治や愛知学院大学などの共同調査によると、カカオポリフェノールを多く含むチョコレートを食べると、血圧が低下することが明らかになったのです。
出典:.meiji.co.jp
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カカオの含有量が高いチョコレートを食べると、カカオポリフェノールの効果で血圧が下がるのです。また、赤ワインのポリフェノールでも血圧が下がるという研究もありますので、チョコレートや赤ワインのポリフェノールで高血圧対策をしましょう。
ただ、チョコレートの食べ過ぎ、赤ワインの飲み過ぎには気をつけて下さいね。
リラックスタイムを作る
1日1時間はリラックスタイムを作りましょう。現代はストレス社会と言われています。現代で生活していく限り、少なからずストレスを抱えながら生活をすることになります。
かといって、ストレスを抱えながら生活していると、交感神経が刺激されて高血圧になっていまいますので、1日1時間はゆったりと自分の好きなことをするリラックスタイムを作りましょう。
リラックスすれば、副交感神経が優位になりますので、血圧が下がります。リラックスタイムのおすすめは、就寝前の時間です。就寝前にリラックスタイムを設けてリラックスすれば、良質の睡眠につながります。
お酒は控えめに!
先ほども説明しましたが、アルコールは一時的に血圧を下げる効果はあっても、長年飲み続ければ高血圧を招きます。
特に、お酒が弱い人は要注意です。お酒が弱い人は、アルコールを肝臓で分解する時に生成されるアセトアルデヒドという物質が体内に長く残ります。アセトアルデヒドは交感神経を刺激しますので、高血圧の原因になるのです。
そのため、お酒は適量を守り、特にお酒に弱い人は控えめにしておくようにしましょう。
定期的に血圧を測る
高血圧対策の11個目は、定期的に血圧を測ることです。あなたは、自分の血圧がどのくらいか把握していますか?血圧を定期的に測っていれば、「最近は高血圧気味かも」など血圧の変化に気づくことができます。
血圧計は薬局などに置いてありますので、薬を購入した際に測るように習慣づけるのも良いですし、自宅用のものは3,000円前後で購入できますので、一家に一台血圧計を置いておいても良いでしょう。
高血圧の治療法
高血圧の治療は、降圧剤を内服することです。ご紹介した11個の対策を実践しても、血圧が下がらないという場合は、病院で専門的な治療を受ける必要があります。
主な降圧剤は次の4種類になります。
・アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)
・カルシウム拮抗薬
・利尿薬
降圧薬は、当初は単薬で低用量から開始し、3ヶ月で降圧目標の達成を目指します。達成できない場合は薬の増量や変更を行います。治療開始後6ヶ月を経過しても降圧目標に到達できない場合には、高血圧専門医に紹介して治療を行います。
どの降圧剤を使うかは、あなたの基礎疾患などによって異なりますので、専門医と相談師ながら使うようにしましょう。
高血圧の仕組みと数値・原因・症状と対策・治療法についてのまとめ
・高血圧の症状は、これといった明らかな症状がなく、サイレントキラーと呼ばれている
・高血圧からの直接的な自覚症状よりも、高血圧の合併症によるものが多い
・高血圧による合併症
「心筋梗塞」「不整脈」など心疾患が多い
・高血圧の原因
「塩分の摂りすぎ」「過度なストレス」「タバコ」「睡眠不足」「高血圧の原因になる病気がハッキリとしているタイプ」
・高血圧の対策
「規則正しい生活を心がける」「塩分は控えめにする」「ストレスは溜め込まない」「禁煙をする」 「良質な睡眠をとる」「適度な運動で肥満を解消」「ミネラルを積極的に摂る」「チョコレートなどのポリフェノールを摂る」「1日1時間のリラックスタイムを作る」「お酒は控えめにする」「定期的に血圧を測る」
・高血圧の治療法は、降圧剤を内服する
高血圧の仕組や数値、原因、症状、対策、治療法についてまとめました。高血圧の原因は、生活習慣に関するものが多いので、高血圧を指摘された人は、生活習慣を見直してみましょう。生活習慣を改善しただけで、短期間のうちに血圧が正常値に戻ることがあります。
また、生活習慣の見直しだけでは血圧が下がらなかった場合は、早めに医療機関を受診して、血圧をしっかりコントロールするようにしてくださいね!